記憶を思い出すには「体内時計」の働きが必要であることを発見

biology 2019/12/24
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point
  • 記憶を思い出すためには体内時計の働きが重要
  • 体内時計の働きによりドーパミンが活性化され、記憶を思い起こすことができる
  • 遺伝子操作された「思い出せない」マウスは、ドーパミン薬剤によって「思い出せる」ようになった

「最近、物忘れが激しい」と感じている人は多いかもしれません。親の認知症で悩んでいる人も多いでしょう。若い人であっても、試験や大切な仕事のために記憶力をフル活用したい日があるものです。

「思い出せない」ことは老若男女共通の悩みですが、そんな悩みを解決してくれるかもしれない前代未聞の発見がありました。

東京大学の木田聡教授らのグループは、記憶を思い出すには体内時計の働きが必要であることを発見したのです。

研究の詳細は「Nature Communications」に掲載されています。

Hippocampal clock regulates memory retrieval via Dopamine and PKA-induced GluA1 phosphorylation
https://www.nature.com/articles/s41467-019-13554-y

「思い出せない」遺伝子操作マウスの作製

研究グループは、以前から人が夕方になると記憶を思い出せなくなる傾向に注目し、脳内の体内時計が記憶と関係するとの仮説を立てました

この仮説を元に、ある遺伝子操作マウスを作製。記憶の中枢である海馬には体内時計を制御する部分がありますが、この時計遺伝子の働きを阻害したマウスを作製したのです。

Credit:東京大学大学院農学生命科学研究科·農学部

遺伝子操作マウスを用いて様々な記憶テストを行った結果、体内時計が壊れたマウスは、いつでも記憶できるのですが、覚えたことを思い出すことができなくなっていました

遺伝子操作マウスは通常のマウスと比べて全体的に想起能力(思い出す力)が劣っているだけでなく、夕方の時間帯にその傾向が強くなるようでした。

このことから、体内時計が記憶を思い出すために大切な働きをしていることが分かります。

投薬による想起能力の改善

さらに、体内時計の壊れたマウスの脳の状態を調べた結果、神経伝達物質であるドーパミンによる情報伝達が損なわれていることも明らかになりました。

つまり、想起能力には体内時計とドーパミンの働きが欠かせないのです。

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体内時計が正常に働くことによりドーパミンを活性化させることができます。これによって情報伝達が活性化し、記憶を思い起こすよう促すようです。

この説を確固なものとするために、研究者は遺伝子操作マウスにドーパミンと情報伝達を活性化させる薬剤を与えました。すると驚くべきことに、ドーパミンが活性化することにより遺伝子操作マウスの記憶想起障害は改善されたのです。

以上の成果により、人に対してもドーパミンなどの薬剤を活用することで、記憶想起障害を改善できる可能性が見出されました。

近い将来、薬によって高齢者の物忘れや認知症が緩和されるかもしれません。

また、記憶を思い出すには体内時計の働きを正常に保つべきです。若い人でも高齢者であっても記憶力をフルに活用したい場合は、規則正しい生活をして体内時計を正しい状態に保つ必要がありそうです。

「後ろ歩き」で短期記憶が向上するという研究

reference: 東京大学大学院農学生命科学研究科·農学部 / written by ナゾロジー編集部

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