JAXAの衛星「つばめ」が超低高度からの地球観測で世界記録!ギネス認定される

science_technology 2019/12/27
Credit:JAXA
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  • JAXAの超低高度衛星技術試験機「つばめ」(SLATS)がギネス世界記録に認定された
  • 通常の地球観測衛星の軌道は高度600km以上だが、つばめは「軌道高度167.4km」の記録を達成した
  • 超低高度軌道では、大気の影響で燃料不足や断熱材劣化などの問題が発生するがつばめはそれらを克服した

日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)の超低高度試験衛星(SLATS)「つばめ」が、地球観測衛星によって達成された最低高度の世界記録を達成したとして、ギネス世界記録に公式認定されました。

通常地球観測を行う衛星の軌道高度は600km〜800kmで、300kmより低い軌道は超低高度軌道と呼ばれます。

「つばめ」は、この高度300km以下の高度を維持することに成功。最低高度では「167.4km」から衛星写真を撮影しました。

低い高度で衛星を飛ばすメリットの1つは、地上撮影の解像度を向上させられることにあります。

衛星を低軌道に維持することには、様々な困難が伴います。「つばめ」一体いかにして困難なミッションを実現させたのでしょうか?

その秘密は、JAXAの探査機「はやぶさ」にも使われているイオンエンジンにあるようです。

今回は、そんな超低軌道に人工衛星を飛ばしたJAXAの技術と、果たした意義について解説していきます。

今回のJAXA「つばめ」の達成した世界記録は、ギネス世界記録のサイト上に掲載されています。

どこからが宇宙なの?

Credit:depositphotos

素朴な疑問として、私達の暮らす地球の大気圏と宇宙の境界はどこなんだろう? と考える人は多いと思います。

これにはしっかりと決まりがあって、地上100kmが大気圏と宇宙空間の境界線(カーマン・ライン)とされています。つまり地上100kmより高い場所は宇宙なのです。

地上100km以上は大気がほとんど無くなるので宇宙なのですが、完全に大気がないわけではありません。

地球観測衛星が飛ぶ高度600〜800kmの軌道でも、地上の1兆分の1程度の微量な大気が存在します

そのため、衛星は定期的にガスジェットを噴射して高度を維持しないと、空気抵抗によって落下してしまいます。衛星は燃料補給などできませんから、燃料の残量がそのまま衛星の寿命になります。

低高度では、さらに大気の抵抗は大きくなります。それは高度維持に必要な燃料が短期間で尽きてしまうことを意味します。つまり低高度では衛星の寿命が極端に短くなってしまうので、普通、低高度の衛星運用は行わないのです。

超低軌道の飛行を実現した「つばめ」のイオンエンジン

つばめの外観図 /Credit:JAXA

「つばめ」は高度180〜300kmの超低軌道を飛行しましたが、この辺りだと高度600kmより大気の密度は1000倍高くなり、大気抵抗も1000倍に増加します

こうした状況で軌道を維持するには、まず燃料の消費をいかにして抑えるかが問題になります。

これを解決したのが、通常使われるガスジェットより燃料の効率が10倍良いイオンエンジンです。このエンジンは、JAXAの有名な小惑星探査機「はやぶさ」にも採用されています。

「はやぶさ」も一人宇宙へ旅立って、補給もなしに長期間のミッションを実現していましたが、これには非常に燃費効率の良いイオンエンジンが活躍しています。

イオンエンジンは燃料をプラズマ化し、プラスイオンだけを取り出してその静電気によって加速します。その推進力は非常にわずかで、たった2g(1円玉2枚)程度しかありませんが、これは超低軌道の薄い大気抵抗をキャンセルするには十分な力です。

イオンエンジンスラスタの外観。/Credit:JAXA

ただ、これは別にイオンエンジンが非力ということではありません。電気推進は理論上は電力を上げていけば、その分いくらでも大きな推進力を生み出すことが可能と言われていて、謎の大電力があれば、光の速度まで到達できます。

ただ、ここで重要なのは燃費がいいという部分です。イオンエンジンを使えば燃料のスペースも少なくて済むため、その分機材を載せるスペースも確保できる上、空気抵抗を減らすための小型化も実現できます。

このイオンエンジンの存在によって、「つばめ」は長期間の超低軌道飛行を実現したのです。

「つばめ」の果たした超低軌道飛行の意義

「つばめ」はただ低いところを飛んでみた、というわけではなく、当然試験機なので様々なテストを行っています。

1つは超低高度からの高解像との地上撮影です。

また、超低軌道で問題となる原子状酸素による熱制御材の劣化も測定しています。

通常の酸素はO2という分子ですが、衛星軌道のような高高度では、酸素は紫外線によって解離して、原子1個の状態で存在しています。これは非常に物質と反応しやすい状態です。

よく人口衛星などは、金色のフィルムに覆われているのを見かけると思いますが、あれはポリイミドと呼ばれる材料でできた特別なフィルムで、宇宙の極端な温度変化や、放射線から人工衛星を守っています。

人工衛星といえば、金のアルミホイルが貼ってあるイメージがある。これは断熱や放射線遮断に優れたポリイミド。/Credit:ファン!ファン!JAXA

このポリイミドは優れた特性を持つ一方、原子状酸素と非常に反応しやすく、簡単に劣化してしまいます。原子状酸素の割合が高い超低軌道は、こうした断熱や放射線の防御を担うフィルムにとって過酷な環境なのです。

「つばめ」はこの問題を解決するための、原子状酸素に強いコーティングが施されています。これがどれほど有効なのか、材料がどう反応して劣化するのかを測定しています。

さらには、高高度の大気が太陽活動からどのような影響を受けているかの調査も行っています。

「つばめ」の集めたデータから、今後超低軌道の観測衛星が当たり前になれば、もっと安価なカメラでも現在の衛星と同等の解像度撮影が可能になります。さらには、もっと高解像度の映像を撮影することも可能になるでしょう。

「はやぶさ1・2」の功績でも世界の注目集めるJAXAですが、培ってきたイオンエンジンの技術で世界記録も樹立し、日本の科学技術水準の高さを示してくれてました。

これはまさに「世界一ィィィィーーーー!」と叫びたくなる、素晴らしい功績ですね。おめでとうございます。

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