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初心者と熟練者の脳内ネットワークの違いが明らかに「熟練者は仕事前から活性化」

2021.01.27 Wednesday

2020.01.04 Saturday

point
  • マウス実験により初心者と専門家の違いは、脳の神経細胞の働きにあることが分かった
  • ある仕事に熟練したマウスは、その仕事を行う前から脳神経細胞が働いている
  • 初心者の脳は色々なことに神経を働かせているのに対し、専門家の脳は目の前の仕事に神経を集中させることが出来ている

熟練の大工は、大工見習いと比べ物にならないほどのスピードと正確性で家を建てることができます。

では、どうして初心者と専門家には、ここまでの大きな違いがあるのでしょうか?

大抵の場合、初心者の方が若いので、専門家よりも、脳の思考速度や記憶力、体力などの身体的能力の点で優れていることが多いはずです。しかし、一夜漬けのように知識を得た初心者では、専門家のような結果を出せません。

では、初心者と専門家が生み出す行動や結果の違いには、何が関係しているのでしょうか?

最近の実験によって、初心者と専門家では、ニューロンの働きが異なっていることが判明しました。

Excitatory and Inhibitory Subnetworks Are Equally Selective during Decision-Making and Emerge Simultaneously during Learning: Neuron
https://www.cell.com/neuron/fulltext/S0896-6273(19)30848-7

マウスの意思決定実験でニューロンの働きが明らかに!

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Credit: mxpixel

ニューロンとは生物の脳を構成し、人間や動物の記憶や学習、発想などに深く関わる神経細胞のことです。ニューロン同士はシナプスと呼ばれるパイプで繋がっており、脳内での情報のやり取りに行っているのです。

アメリカのコールドスプリングハーバーラボラトリー(CSHL)などの研究者は、マウスがタスクを実行し続けて訓練されることで、ニューロンの働きがより集中することを発見しました。

実験では、マウスに「目の前にある3つの水しぶきのうち、1つを舐める」仕事を与えました。それぞれの水しぶきには確率と報酬が設定されています。高確率で報酬が得られる水しぶきもありますし、低確率でしか報酬を得られない水しぶきもあるというわけです。

4週間かけてこの仕事を繰り返すうちに、マウスたちはこの仕組みを学習し、水しぶき舐めの初心者から専門家へと成長。

そのマウスたちの脳を測定したところ、専門家となったマウスのニューロンは、特定の仕事においてのみ、より迅速に反応するようになりました。

一方、学習し始めたばかりのマウスは、実際に1つの水しぶきを選ぶまではニューロンが反応しません。しかし専門家となったマウスは、水しぶきを選ぶ前から、ニューロンが働いていたのです。

研究者であるチャーランドはこのように述べています。「初心者の脳は様々なことに対して働いており、ニューロンも様々な物事に関与しています。しかし、専門家の脳は、今行おうとしていることに集中しているのです」

つまり、初心者のニューロンはマルチタスクをしているのに対して、専門家のニューロンはシングルタスクができるようなっているのです。

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Credit: maxpixel

このマウス実験から、初心者と専門家の違いにはニューロンの働きが大きく関係していることが分かりました。初心者は能力や知識があったとしても、それらを上手く活用することができず、ニューロンの作用に「無駄がある」ようです。

対して、専門家のニューロンは特定の仕事に特化して働きます。その分野に対してのみ割ける脳の割合が大きいので、ちょっとした変化に気付いたり、様々な情報も仕事に関連付けたりできます。

仕事に熟達した人が、仕事外でもちょっとしたきっかけで仕事のことを考えてしまう「職業病」も、実はこのようなニューロンの働きが関係していると言えるのでしょう。

次ページニューロンの働きは行動予測に役立つ

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