悪名高い「インドコブラ」のゲノム解析に成功 新時代の「血清」を作る鍵に

animals_plants 2020/01/08
インドコブラ「Naja naja」/Credit:Wiki Commons
point
  • ヘビ毒に対する世界初の血清は、1891年に誕生しており、それ以降、作り方はほとんど進歩していない
  • 今回、インド国内で年間1万人の死者を出す「インドコブラ」のゲノム解析に成功、新たな血清誕生に期待が高まる

あまり知られていませんが、ヘビによる被害はかなり多く、年間で約540万人がヘビに噛まれており、その内270万人ほどが毒ヘビによるものと言われています。毒ヘビによる死者は年間10万人を超えており、切断手術や後遺障害に陥る患者はその3倍になります。

これほどの被害が出ていながら、ヘビ毒に対する医療技術はほとんど進歩していません。

しかし今回インドやアメリカの共同研究により、インドで最も危険な毒ヘビ「インドコブラ(Naja naja)」のゲノム解析に成功しました。

この結果は医療的に大きな価値があり、シンプルかつ効果的な抗毒血清の誕生が期待されています。

研究の詳細は、1月6日付けで「Nature Genetics」に掲載されました。

The Indian cobra reference genome and transcriptome enables comprehensive identification of venom toxins
https://www.nature.com/articles/s41588-019-0559-8

世界最初の抗毒血清とは

ヘビ毒に対する世界最初の血清は、1891年、フランス人医師のアルベール・カルメット氏により開発されました。

カルメット氏は、狂犬病や天然痘に関するワクチン開発のため、ベトナムに医療院を開設しました。ところが、実際には毒ヘビに噛まれて運び込まれる現地住民が非常に多かったのです。

カルメット氏/Credit:logmi

カルメット氏はその後すぐにヘビ毒の研究を開始し、ウサギにヘビ毒を注入する実験を実施。その結果、少量の毒ならウサギは体内で抗体を作り出し、毒を中和することが判明しました。

これを利用して作ったのが、世界初となるヘビ毒の血清です。

血清は体内で抗体の生産を促進します。ヘビ毒自体を退治するのではなく、毒の影響を中和し、体全体に回るのを防ぐ役目を果たします。

進歩しない血清の作り方

しかしカルメット以降、血清の作り方は今でもほとんど変わっていません。

まず、ヘビから毒液を搾り出し、馬や羊に数週間かけて少量ずつ毒を注入します。これにより、体内で毒を中和する抗体が作られます。そして十分な量ができたら、抗体を含む血液を採取し、純化すれば完成です。

毒を搾り出すプロセス/Credit:logmi

その一方、毒液500mlを集めるのに約7万匹が必要と言われており、かなりの手間暇がかかります。

そこで共同研究チームは2年の歳月をかけて、インドコブラの毒生成に関するゲノムを解析しました。インドコブラは、現地インドで悪名高い存在として知られ、年間1万人以上がその毒牙により命を落としています。

インドコブラ/Credit:techexplorist

ゲノム解析の結果、インドコブラの持つ毒素は1つではなく、複数存在することが分かりました。さらに、毒を作るための鍵となる遺伝子が19個あることも特定されています。

研究チームは「この研究は、毒素成分と、それらを暗号化する遺伝子との関係性が明らかになった初の例であり、画期的な抗毒血清の開発法が誕生する可能性は大だ」と話します。

今後の研究次第では、ヘビ毒による死者がいなくなるかもしれません。

25年間ヘビの毒を趣味でキメてきた男、その体が血清の宝庫となってしまう

reference: zmescience, logmitechexplorist / written by くらのすけ
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