線虫の寿命を500%延長させることに成功「人間の400歳分」

biology 2020/01/10
線虫「C. elegans」 / Credit: © heitipaves / Adobe Stock
point
  • 線虫の寿命を500%延長させることに成功した
  • 寿命を大きく延ばすためには、個々の細胞経路だけでなく、細胞経路ネットワークによる相互作用に目を向けることが大切

「長生きしたい」というのは人類普遍の願望ですが、寿命を延ばす決定的な方法は未だわかっていません。

しかし新しい実験で、人間と同じ多細胞生物の寿命を「人間換算で400年から500年」延ばすことに成功したようです。

MDI Biological Laboratoryの科学者たちは、カリフォルニア州ノヴァトのバック研究所と中国の南京大学の科学者と共同で、線虫の寿命を500%延長する細胞経路を特定しました。

研究の詳細は「MDI Biological Laboratory」に掲載されています。

MDI Biological Scientists Identify Pathways That Extend Lifespan by 500 Percent
https://mdibl.org/press-release/mdi-biological-scientists-identify-pathways-that-extend-lifespan-by-500-percent/

線虫は人間の老化モデル

Credit:老化研究基盤情報

線虫とは、回虫などを含む細長い多細胞生物です。線虫の一種である「C. elegans」は多くの遺伝子をヒトと共有しており、老化傾向も似ていることから、老化に関する研究の対象となっています。

線虫を含む多細胞生物は、たくさんの細胞の集まりです。それぞれの細胞間でコミュニケーションを取ることにより、1つの生き物として生存しているのです。このコミュニケーションには「シグナル経路」と呼ばれる細胞間の情報伝達経路が使用されます。

細胞経路を通して情報が送られることで、それぞれの細胞が働いたり、発達したり、変化したり、死んだりするのです。当然、細胞経路に変化を加えれば、細胞の働きにも大きな変化があります。多くの科学者はこの変化をアンチエイジングに活用できないかと考えています。

細胞経路は非常に複雑で多種多様なのですが、多細胞生物の多くは同じ経路構造を持っています。線虫は人間と同様の経路を持っているので、線虫の細胞経路の実験は、人間の可能性を大きく広げるものとなります。

線虫の寿命を500%延長する細胞経路を発見

インスリンシグナル経路/Credit:cellsignal

科学者たちは線虫の細胞経路を遺伝的に変更することで、線虫の寿命を500%延長させることに成功しました。

変更した細胞経路はISS(インスリンシグナル)経路とTOR(ラパマイシン標的タンパク質)経路の2つです。

ISS経路はタンパク質やグリコーゲン合成、脂肪酸合成の活性化に影響を与え、TOR経路は細胞増殖とタンパク質の合成に影響を与えます。

これまでの研究によって、それぞれの細胞経路が線虫の老化スピードに影響を与えることが証明されていました。ISS経路のみの変更では寿命が100%増加し、TOR経路のみの変更では30%増加していたのです。

今回の新しい研究では、ISS経路とTOR経路の両方が変更された2重変異体の線虫が使用されました。科学者は130%の寿命延長を予想していましたが、研究結果は500%増加だったのです。これは、2つの細胞経路変更の相互作用による結果といえます。

細胞経路の相互作用の発見は、老化に関する細胞メカニズムを解明するうえでの大きな進展でしょう。南京大学のジェンファンラン博士の主執筆者であるローリンズ氏は「最も効果的なアンチエイジング治療を開発するには、個々の経路ではなく、長寿ネットワークに目を向ける必要があります」と述べています。

今後、細胞経路の相互作用への理解が深まるなら、線虫と同じように人間の寿命を大きく延ばす手がかりをつかむことができるかもしれません。がんやHIVの治療には併用療法が効果的です。同じように、老化原因である細胞経路への併用療法によって人間の寿命を延ばせる可能性があるのです。

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reference: sciencedaily / written by ナゾロジー編集部

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