
ジョージアとの国境近くに位置するロシアの村・ダルガフス。
この村の外れに、地元住民から「死者の街」として恐れられた場所が存在します。ここには99の墳墓が密集しており、1万人を超える遺骨が眠っているというのです。
地元民には「この地に足を踏み入れた者は二度と戻ってこれない」と信じられていました。
これまで多く謎に包まれてきた「死者の街」ですが、最近の調査によって徐々に謎が暴かれてきたようです。
死人が眠る街

現在、「死者の街」は、中世時代に建てられたネクロポリス(共同墓地)であることが分かっています。16世紀頃から墓地として使用されていますが、その起源はいまだに不明です。
一説には、13世紀のモンゴル人侵攻により領地が圧迫され始めた際、地元民が居住地や農地を確保しておくため、墓地を峡谷の斜面に密集させたとされます。もう一説には、ロシア南部に移住してきたインド・イラン系のサルマティア人の伝統に倣ったとも言われます。

墳墓の中に埋葬されている遺体には、保存状態がかなり良いものもあり、中にはまだ肉が付着したままの遺骨もあるようです。遺骨の周囲には、副葬品なども多数確認されています。
例えば、遺骨の一部は、ボートに似た木棺の中に埋葬されており、隣にはオールが置かれていました。近くに航行可能な川がないことから、当時の人々は「死者が天国に行くには川を渡らなければならない」と考えていたことが伺えます。

また、17〜18世紀には、同地で疫病が蔓延しました。その際、感染した住民は、生きたまま墳墓に閉じ込められ、ただ死を待つのみだったと言われています。
そして19世紀頃に、地元住民は同地を去り、死者の街だけが後に残されました。その後、死者の街が明るみになるのは、20世紀になってからのことです。
今日では世界中から多くの観光客が、中世の美しい建造物を見るために同地に足を運んでいます。