デコボコな壁でも吸い付く「スパイダーマンロボット」が開発される

technology 2020/01/27
(a)ZPDユニットの吸引アーム (b)ZPDユニットの壁登りロボット (c)ZPDユニットを使ったスパイダーマン /Credit:AIP
point
  • デコボコの表面に対しても強い吸着力を維持できる装置が開発された。
  • 新しいユニットを使うなら、スパイダーマンのように滑らかでない壁でも登ることができる

物体に触れずに「つかめる」ロボットアームが開発される

スパイダーマンのように壁を登るロボットはこれまでにも開発されてきましたが、滑らかな表面の壁でしか活躍できませんでした。

そこでシン・リー研究員らは、デコボコの表面でも吸着力を保持できる真空吸引ユニットを開発。このユニットには吸盤内と外の圧力差を無くす方法が採用されています。

新開発されたユニットを使うなら、スパイダーマンのように多少荒い表面の壁でも簡単に登ることができるでしょう。

この研究の詳細は「Physics of Fluids」に掲載されました。

Vacuum suction unit based on the zero pressure difference method
https://aip.scitation.org/doi/10.1063/1.5129958

従来の真空吸引ユニットの仕組みと弱点

掃除機を使用していて、誤ってカーテンやタオルなどを吸い込んでしまったことがあるでしょう。電源を切らない限り、取り除くのは難しいはずです。この時、掃除機の吸引口内には真空状態が作り出されています。

吸引口が塞がれ新しい空気が入ってこないにもかかわらず、掃除機は内側の空気をどんどん吸い出します。結果、吸引口内の空気密度が小さくなり、一時的な低気圧空間(真空)が作り出されているのです。私たちがよく体感しているように、真空は強い吸着力を生み出します。

従来の真空吸引ユニットの吸盤内と境界/Credit:AIP
従来の真空吸引ユニット (a)赤線は滑らかな表面での吸盤内外の圧力差を表わしている (b)緑線は荒い表面での吸盤内外の圧力差を表わしている /Credit:AIP

同じような原理は工場や壁登りロボットなどの吸盤に広く活用されてきました。これらは真空吸引ユニットと呼ばれています。

空気は気圧が高い所から低い所へ流れる性質を持っています。ですので、吸盤内に低気圧空間(真空)を作り出すなら、吸盤の外から中に空気が入ってこようとします。

上図(a)のように、吸着面が平らであれば隙間を無くすことができるので、空気の流れを遮断できます。結果、真空状態を維持して強い吸着力を生み出せます。

しかし、上図(b)のように、吸着面がデコボコしている場合、そこから空気が入ってきてしまい低圧力空間(真空)を保つことができません。真空吸引ユニットは便利ですが、利用環境が限られているのです。

この問題をどのように解決できるでしょうか?研究者たちは、吸盤の境界の圧力差を無くす(大気圧と同じ圧力にする)ことで、吸着面がデコボコしていても空気が流れ込まないようにしたのです。

ZPDユニットの仕組みと利点

ZPDユニットの吸盤の内部と境界/Credit:AIP

開発された新しい真空吸引ユニットにはZPD(zero pressure difference)メソッドが採用されています。ZPDメソッドでは、吸盤内に直接真空状態を作りません。その代わり、吸盤内に回転する水の層を作り、その内側に真空状態を作ります。この方法により、吸盤の境界における気圧差を無くせるのです。

吸盤内に水が注入されつつ、ファンが回転するようになっています。吸盤内の空気と水が回転すると、密度差によって外側に水のリングができます。

赤線はZPDユニットにおける圧力差を表わしている/Credit:AIP

上図のように、水リングと遠心力により、水リングの内と外で空気が遮断されます。水リングの内側には外から空気が入ってくることがありませんが、吸引ポンプで排出される力が働くので、空気密度が薄くなり、低圧力空間(真空)を保てます。

また、水リング間でのみ急激な圧力変化が生じる(上図赤線)ので、吸盤内の境界付近では大気圧と同じ状態を維持できます。圧力差が無いので、表面がデコボコしていても空気が入ってくることはありません。

ZPDユニットは従来の真空吸引ユニットよりも小型で軽量です。このユニットを使って人間がスパイダーマンのように滑らかではない壁を登ることができます。また、スパイダーロボットも作成されています。

今後は水の消費量削減が目標とされており、より実用的に改善されていくようです。

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reference: Phys.org / written by ナゾロジー編集部

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