木造建築でCO2を大幅削減? 注目が集まる集成材「マスティンバー」

science_technology 2020/02/03
Credit: pixabay
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  • 世界中で新たに作られる建物の9割をマスティンバーで建てることで、年間7億トンのCO2を削減できるという試算が出された
  • マスティンバーとは、複数の木材を組み合わせて圧縮強度と張力強度を向上させた集成材のこと
  • 伐採方法と再利用方法の整備が課題

「今さら木造?」と思う人も多いかもしれませんが、現在、持続可能な社会のために木造建築を活用するという考え方が注目を集めています。

最近の研究で、世界中で新たに作られる建物の9割を木造建築にすれば、年間7億トンものCO2を削減できることが明らかになりました。

研究は独ポツダム気候影響研究所の研究チームによって行われ、論文は雑誌「Nature Sustainability」に掲載されています。

Buildings as a global carbon sink
https://www.nature.com/articles/s41893-019-0462-4

CO2吸収量は自然林の3倍以上!?

研究チームは、2050年までに世界人口が95億人を突破し、その7割が都市部に居住すると予測。そうして新しい住居や商業施設の需要が増えれば、これらの建物を作るためのコンクリートや鉄といった資材が、さらに多くの温室効果ガスを生むことになります。

世界のCO2排出量の8%はコンクリートによるもので、これは世界のCO2の2.4%を占めるジェット燃料を大きく上回ります。私たちがコンクリートや鉄といった鉱物をベースとした建築資材を用いて建物を作り続けた場合、2050年までに世界のCO2排出量の約5分の1の発生源はこれらの資材が占めることになるのです。

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私たちは今世紀半ばまでにCO2排出量を減らし、それと同時に効果的なCO2吸収源を見つける必要があります。

そこで研究チームが目を付けたのが、CO2を吸収しないコンクリートや鉄と違い、長期間にわたってCO2を吸収できる木材、とりわけ「マスティンバー」(複数の木材を組み合わせて圧縮強度と張力強度を向上させた集成材)の存在でした。

研究チームは、マスティンバーで作られた5階建ての住居用建築が吸収することのできるCO2の量が、1㎥辺り年間180キロに上ると試算。これは、CO2濃度の高い自然林の3倍以上に匹敵する量です。

研究チームは、マスティンバーを用いた建築についてこの先30年の間に起こりうる4つのシナリオを想定しました。

1つ目のシナリオは、これまでと変わらず、新建築の大部分がコンクリートや鉄で作られ、残りの0.5%のみが木材で作られるというもの。2つ目のシナリオは、10%が木材で作られるというもの。3つ目のシナリオは50%が木材で作られるというもの。4つ目のシナリオは、90%が木材で作られるというものです。

もちろん、2つ目以降のシナリオは、まだ産業化の進んでおらず、今後多くの建物を作ることになる国々において、建築方法の切り替えが実施されることが条件です。試算では、2つ目のシナリオでは一年間で吸収できるCO2が1,000万トンであるのに対し、4つ目のシナリオでは7億トンものCO2を吸収できることが明らかになりました

伐採方法と再利用方法などの課題も

ただし、こうしたベネフィットを手に入れるには条件があります。それは、木材を調達する場所と、建物が寿命を迎えた時の木材の処理に関する条件です。

マスティンバーの材料は、軟木と硬木に加えて、竹などの木材を幅広く、従来よりも多く伐採することで入手する必要があります。

また、マスティンバーを用いた建築は、寿命を迎えた時にその材料を再利用できる形で初めから設計されなければなりません。さらには、取り壊された建物に使われていた木材の再利用を促すことも重要です。

研究チームが分析したところ、2010年時点で、世界の3分の2の国々で、木材の伐採量が森林の成長速度に追いついておらず、手つかずの資源が残っているとのこと。現在、伐採済みの丸太の約半数は燃料として燃やすために使われているため、その使い道をマスティンバーに切り替えることができれば、CO2排出量の大幅な削減が期待できます。

一方で、気がかりなのは火事のことです。でも実は、予測に反してマスティンバーは耐火性が極めて高いことが明らかになっています。マスティンバーは着火すると、焦げて炭になった層によって中心部が守られ、建物そのものは燃え尽きずに済むのです。

マスティンバーは、従来のライトフレーム木造建築とはまったく違うものです。最近、国際建築基準においても、マスティンバーは「防火性が認められる」資材として認められました。

もちろん、コンクリートや鉄からマスティンバーへの切り替えは、そう容易ではないでしょう。新しい建築基準の整備に加え、建築技術者の再訓練、建築技術の拡大など、さまざまな変革が求められます。

同時に、マスティンバーの需要が今後拡大すれば、持続可能な森林の管理、乱伐防止、森林を有するコミュニティーに対する援助などに向けた法的・政治的努力が必要です。

建築における木材の活用に関して、人類は決して初心者ではないかもしれません。ですが、気候変動への対応策として効果的な木材の利用については、今後学ぶべきことが数多くありそうです。建築の新たな資材として木材を最大限に活用し、伐採と建設の両方をスマートに管理することができるようになれば、人類は地球をより安全な住処に変えることができるでしょう。

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reference: fastcompany / written by まりえってぃ

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