psychology

生活から「匂い」が消えると人はどうなるのか?

2021.01.27 Wednesday

2020.02.02 Sunday

Credit: GEORGEPETERS
point
  • 匂いを感じなくなる「無嗅覚障害」は、記憶の喪失や人間関係の崩壊など、実生活に大きな悪影響をもたらす
  • いい匂いのする場所の方が、人は親切な行動を取りやすくなる

あまり世間に認知されていない病気に、「無嗅覚障害(Anosmia)」があります。

これは読んで字のごとく、嗅覚に障害をきたして、匂いをまったく感じなくなる病です。総人口の約5%に見られ、原因は、感染症やアルツハイマーによる併発、薬の副作用など多岐にわたります。

そして今回、イースト・アングリア大学(英)の調査により、無嗅覚障害がもたらす悪影響の数々が明らかにされました。

無嗅覚障害は、予想をはるかに越えて、人生を狂わす深刻な病気なのです。

「嗅覚」が消える恐ろしさ

研究チームは、無嗅覚障害の患者71名(31歳〜80歳)に協力してもらい、実生活に起こる被害を調査しました。

まず、大きな問題は、自分の衛生状態が分からなくなることです。悪臭に気づかないため、知らずの内に、周囲に迷惑をかけたり、体調を崩すことがあります。

それから、新生児を育てる親なら、オムツを変えるタイミングが分からず、子どもの衛生状態を損ねるなど、育児の挫折感へと繋がるでしょう。

さらには、食事の楽しみを失い、体重が激減する人、あるいは、味覚も落ちるので、摂取する脂肪分や塩分、糖分が過剰になり、健康に被害も与えます。被験者のある女性は「食や料理に興味を失ったことで、家族や友人との間に大きな溝ができた」と報告していました。

Credit: pixabay

また、危険察知が鈍ることも問題です。付けっ放しのガスの匂いや煙の匂いなどに気づかず、身を危険に晒す恐れがあります。

そして、もう一つ判明した問題は、「記憶力の低下」でした。記憶が匂いと結びついて定着することがすでに知られていますが、嗅覚がなくなることで、想起できるはずの思い出も大幅に減っていきます。

香水の香り、思い出の場所の匂い、大切な人の服の匂い…こうした匂いが分からなくなることで、関連する記憶が思い出せなくなるのです。

以上のような影響により、患者は、孤立感や自信喪失、後悔、苦しみ、怒りなどネガティブ感情に苛まれることになります。その結果、不安症状やうつ病を発症する人も少なくないのです。

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