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肺は喫煙ダメージを「細胞の置換」によって修復できると判明

2021.01.27 Wednesday

2020.01.30 Thursday

Credit: depositphotos
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  • 喫煙による肺のダメージの一部は、禁煙後に「喫煙未経験者と同じレベル」にまで癒されることが分かった
  • 貯蔵庫に蓄えられていた健康な細胞と損傷した細胞が置換される

30年、40年喫煙していると、「禁煙するには遅すぎる」と言われることがあります。喫煙者本人もそう感じているかもしれません。

多くの人が、「長年ダメージを受けてきた肺が回復することはない」と考えているのです。

しかし、新しい研究は「喫煙をやめるのに遅すぎることはない」ということを示唆しています。禁煙すると、肺は細胞を置換することによって喫煙によるダメージを癒せることが判明したのです。

研究はイギリスの遺伝学研究所ウェルカム・サンガー・インスティテュートとUCLによって行われ、の詳細は1月29日、「Nature」誌に掲載されました。

Tobacco smoking and somatic mutations in human bronchial epithelium
https://www.nature.com/articles/s41586-020-1961-1

肺のダメージが「魔法のように」癒される

画像
Credit:pixabay

新しい研究では、喫煙者、元喫煙者、喫煙経験のない成人、子供を含む16人の肺生検が分析され、がんにつながる可能性のある遺伝子変異を探しました。

加齢による細胞の遺伝子変異は基本的に無害だとされている一方、喫煙による遺伝子変異は有害であり、がんに繋がる可能性が高いとされています。

実際に喫煙者の肺細胞10個中9個は遺伝子変異しており、そこにはがんに繋がる有害なものも含まれていました。

研究者が次に注目したのは、元喫煙者の細胞の状態です。

もともとは肺の大部分にダメージを負っていたようですが、禁煙後、細胞の40%が健康状態になっていることが分かりました。しかもこれらの細胞は「喫煙経験のない人」と同じ健康レベルとのこと。

つまり、喫煙をやめたことで損傷した細胞がみるみる回復していたのです。

ダメージを負った肺が癒える仕組みについて、研究者は次のように述べています。「損傷した細胞は自分自身を修復することはでません。ダメージを負っていない健康な細胞が、それらに取って代わるのです」。

研究者は、健康な細胞を蓄えている「貯蔵庫」のようなものがあると考えています。人が喫煙をやめると、その貯蔵庫から健康な細胞が増殖していき、損傷した細胞と置換するのです。

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