- 火星の公転のゆらぎによって、氷とドライアイスの層がつくられることが判明した
- 火星の南極にあるドライアイスが昇華することで、大気圧は現在の4分の1から2倍にまで変動する
地球の南極大陸に氷があるように、火星の南極にも「南極冠」と呼ばれる層状の氷で覆われている部分があります。南極冠は水(氷)と二酸化炭素(ドライアイス)が混ざったものからできています。
南極冠は氷とドライアイスが交互に重なり合って層を形成しています。しかし、層状になる理由は長年解明されていませんでした。
そこでカルフォルニア大学のピー ター・ビューラー氏らの研究チームは、「火星の公転のゆらぎが氷とドライアイスの層形成に寄与する」ことを発見。長年の謎が解明されたかもしれません。
研究の詳細は「Nature Astronomy」誌に掲載されています。
https://www.nature.com/articles/s41550-019-0976-8
火星の南極冠が層状になる理由
火星の南極冠が神秘的なのは、氷とドライアイスがいくつもの層になっている点です。
理論的には、氷はドライアイスよりも温度的に安定しているため、交互の層状をつくりません。
氷は0℃以下で固体を維持できますが、ドライアイスは-79℃以上になると昇華(気体化)してしまうためです。
氷が下層、ドライアイスが上層という単純な2層であればあり得そうですが、実際には交互にいくつもの層を作り上げているのです。
しかし、研究チームの調査によって、長年謎とされてきた層形成が解明されました。
チームによると、主な要因は「公転」です。
火星は太陽の周りを公転しますが、回転軸上で「ぐらつく」ことがあります。これによって傾斜が変化し、南極に到達する太陽光の量が変化します。
太陽光が少ない期間には、ドライアイスが形成されますが、この時、少量の氷も同時に存在します。
太陽光が多い期間には、ドライアイスが昇華するので、氷のみの層が形成されます。
氷は堆積物を密封するわけではないので、太陽光が多い時期には、氷を通り越して昇華します。
しかし、火星の気候の変化が、毎回すべてのドライアイスを昇華させるわけではないので、氷と氷の間にドライアイスが残るようになりました。
科学者たちは、太陽光の多い時期と少ない時期が510,000年繰り返されることによって、今の南極冠ができたと考えています。