クラゲに電気刺激を与えて高速で移動させる「クラゲ・サイボーグ」実験

animals_plants 2020/02/04
Credit:Science Advances
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  • コントローラーが装着されたクラゲサイボーグは通常の約3倍の速度で泳ぐことが可能
  • クラゲサイボーグのエネルギー効率は、他の水泳ロボットの最大1000倍ものエネルギー効率を有する

クラゲは水の中を優雅に漂う神秘的な生き物ですが、その見た目に似合わず、エビや稚魚などのエサを求めて水の中を一日中泳ぎ続ける活動的な生物でもあります。

クラゲは、イルカやサメなどの動物スイマー中でも屈指のエネルギー効率を誇り、その驚異的なエネルギー効率によって無休遊泳を可能にしているのです。

しかし、移動スピードが遅いのも事実。そこで、スタンフォードの大学の科学者たちは、クラゲに筋肉を刺激するコントローラーを取り付けることにより、高速で泳ぐクラゲサイボーグを作り出しました。

クラゲサイボーグは泳ぐスピードを増しただけでなく、他の水泳ロボットよりも10~1000倍のエネルギー効率を有しています。

研究の詳細は1月29日に「Science Advances」誌に掲載されました。

Low-power microelectronics embedded in live jellyfish enhance propulsion
https://advances.sciencemag.org/content/6/5/eaaz3194

生物と機械の融合?クラゲサイボーグ

(B)コントローラーの部品 (C)コントローラー完成版/Credit:Science Advances

クラゲは、水泳コストが非常に小さいため、エネルギー効率の高い水中車両の魅力的なモデル生物と言えます。

現在でも水泳動物を模倣したロボットは作られていますが、クラゲとは桁違いに低い効率でしか泳げません。

そこで科学者たちは「人間のもつエネルギー効率理論」と「生物が持っている効率の良い身体」を掛け合わせることで、よりエネルギー効率の良いものを生み出せると考えましました。

生物に人間が作った機械を埋め込むという「バイオハイブリッドロボ」を開発したのです。

研究者たちは水族館からクラゲを調達して、筋肉組織に防水推進システムを埋め込みました。

このシステムは、リチウムポリマーバッテリー、マイクロコントローラー、マイクロプロセッサー、および電極セットで構成されています。

コントローラーが電極を介してクラゲの筋肉に移動のための電気信号を送り、収縮させます。

コントローラーが効率的な指示を出すことで、高いエネルギー効率を保ちつつ、クラゲ自身が普段行わない高速移動を可能にしたのです。

結果、クラゲの泳ぐスピードは毎秒2cmから毎秒6㎝になりました。泳ぎの速度が3倍になったのです。

クラゲサイボーグはエネルギー効率も良い

高速で移動できたとしても、エネルギー消費が大きすぎては意味がありません。その点でも、クラゲサイボーグは良好な成果を挙げました。

クラゲサイボーグのエネルギー消費は、コントローラーシステムによる外部電力とクラゲ自身の代謝による内部エネルギーから成り立っています。

外部電力効率は既存の水泳ロボットの最大1000倍にもなりました。クラゲの筋肉に信号を送るだけですので、外部電力は微量で済んだのです。

また、約3倍もの速度で泳いだにもかかわらず、クラゲ自身の内部エネルギー消費量(酸素消費量)は2倍になるだけで済みました。

クラゲサイボーグは水泳速度を増しつつ、高いエネルギー効率を維持できたのです。

この実験により、クラゲの潜在的な能力が明らかになりました。

また、バイオハイブリットロボによる研究が進むことにより、生物全体の研究も前進すると考えられます。バイオハイブリットロボを活用したり、模倣したりすることで、より効率的な水中車両を生み出せるかもしれません。

ちなみにクラゲは、コントローラーが外された後、自然治癒して通常の水泳が可能になったとのこと。クラゲには痛覚がありませんし、ストレスを感じた時に分泌する粘液も出なかったようです。

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reference: zmescience / written by ナゾロジー編集部
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