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「足を使う画家」の脳は普通の人と大きく違っていた

2021.01.27 Wednesday

2020.02.10 Monday

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ピーター・ロングスタッフさん/Credit: smithsonianmag
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  • イギリスの研究により、足で絵を描く画家には、脳内の感覚マップに大きな変化が起きていることが判明
  • 通常、感覚マップにおける足の領域はごく小さなものだが、画家には、足指に相当する場所が明確に見分けられた

足を使う画家には、脳内に特別な感覚マップが形成されていることが判明しました。

一般人の感覚マップでは、足の指に相当する部分は曖昧ですが、足を使う画家には、足の指の1本1本に相当する部分がはっきりと存在したのです。

研究を行ったユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの神経科学者ハリエット・D・ジョーンズ氏は「足先を手のように使うことで、脳の神経が再配線されたのでは」と話しています。

足の指一つ一つが「感覚マップ」に存在

今回、調査に協力してもらったのは、足を使う画家のトム・イェンデルさんとピーター・ロングスタッフさんです。

2人は生まれつき腕がありませんが、足先を巧みに使うことで、見事な絵を描きます。

下の動画は、イェンデルさんが、足だけを使って、色鮮やかな花の絵を描く様子です。

どうしてこのような神業が可能なのかを知るため、研究チームは、2人の脳内にある感覚マップを調査しました。

「感覚マップ」とは、体性感覚野という脳領域に位置しており、体のそれぞれの部位から来る運動を処理し、記録する働きがあります。全身が、脳の一部に投射されたものと考えて良いでしょう。

従来の研究によると、手を使う人においては、指ごとに感覚マップを持っていますが、足の指は、全体が小さな塊としてあるのみです。

感覚マップ/Credit: Rasmussen and Penfield, 1947

しかし、イェンデルさんとロングスタッフさんの感覚マップは、大きく違いました。

研究チームは、「fMRI(磁気共鳴機能画像法)」を用いて、2人の感覚マップを作成し、同時に、足の指先に刺激を与えることで、マップにどのような反応が現れるかを調査しました。

すると、一般人とは異なり、それぞれの足の指先に対応する領域が明確に反応したのです。つまり、2人は、足の指一つ一つに当たる領域を感覚マップ内に持っていることを意味します。

ジョーンズ氏は「脳には、確かに順応性があるので、訓練と経験を積めば、感覚マップの細部が多少変化することはありえます。しかし、ここまで大きな変化が現れるのは、前例がありません」と話します。

Credit: pixabay

また、イェンデルさんとロングスタッフさんに対する質問調査では、驚くことに、2人とも手で使うために設計された細かな道具(マニキュア液やスポイト)も普段から使っていることが分かりました。

今回の結果は、脳の適応能力の高さを示す顕著な例であり、人間に未知なる可能性が秘められていることを示唆しています。

脳を半分失った人は特殊な「脳の繋がり」を持つと判明

reference: smithsonianmag / written by くらのすけ

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