ベトナムの村人が竹の棒で荷物を運ぶ時の物理学的メリットがおもしろい

physics 2020/02/06
Credit:COURTESY RYAN SCHROEDER
point
  • 研究により、ベトナム山間部にある「竹の棒による運搬法」が物理学的に優れていると判明
  • 「竹の棒による運搬法」にはホッピング玩具に似た物理作用がある

ベトナムの山間部では、竹の棒が荷物運びに利用されています。

この竹の棒によって、地元の人たちは非常に重い荷物を楽に運べるようです。実際、高齢者でも若者と同量の荷物を運ぶことができます。

もちろん、ベトナムの村人たちが特別力持ちだというわけではありません。高重量運搬の秘密は、竹の棒とその扱い方にあります。

最近、タイグエン大学のヴァン・ヴィン・ハックらの研究チームによって、荷物を運ぶ際の竹の棒の利点が明らかにされました。

彼らは柔軟な竹の棒を使用することで、荷物の重さを歩くエネルギーに変換していたのです。

研究の詳細は2019年12月4日、「Journal of Experimental Biology」に掲載されました。

Load carrying with flexible bamboo poles: optimization of a coupled oscillator system
https://jeb.biologists.org/content/222/23/jeb203760

竹の棒の「しなり」を利用した運搬法

ベトナムの東南アジアの山村には、モン族という少数民族がいます。彼らの間では、弾力性のある竹の棒の両方に荷物をぶら下げ、天秤のようにして運ぶのが一般的です。

この運搬法は、馴染みのない人にとっては非常に負荷の強い方法に思えます。しかし、実は物理学的に優れた運搬方法であると判明したのです。

通常、人が歩く時にはエネルギーを消費するものです。そして、そのエネルギーコストの大部分は一歩を踏み出す時にかかります。

前進するためには、踏み出した足とは別の足で地面を押す必要があります。

例えば重いリュックサックを背負っているときには、「体重+荷物」分の力を片方の足だけで蹴り上げなければいけず、とても負荷がかかります。

一方、竹の棒を使用すると、「竹の棒のしなり」によって上下の振動が生じます。

竹の棒を使って前進するために一歩踏み込むと、荷物の重みで竹と荷物は下方向に大きく沈み込みます。

その後、竹の弾性によって、荷物の重さによって生じた下方向の力が逆方向(上方向)に変換されます。つまり。上方向への跳ね上がる力が生まれるのです。

少しの時間、跳ね上がる力が加わるので、この瞬間に地面を蹴ることで、片足にかかる力は「体重+荷物-跳ね上がる力」となります

跳ね上がる力がプラスされるので、前進する時には荷物の重さをあまり感じなくなるのです。

ホッピングと似た物理

Credit:depositphotos

この竹の棒による運搬プロセスと似た物理作用を利用しているのが、ホッピング玩具です。

ホッピング玩具は、バネの弾性と体重を利用して上方向のエネルギーを生み出し、それを高いジャンプや前方向へのジャンプに応用しています。

同じように、ベトナム村人の運搬法は、竹の棒の弾性と荷物の重さを利用して上方向のエネルギーを生み出し、それを歩行と運搬に応用しているのです。

しかし、この方法は誰でもすぐにできるわけではありません。ホッピング玩具で前進するのにコツがあるように、竹の棒による運搬にもコツが必要なのです。

実験によると、村人たちが竹の棒の振動に合わせて歩行を調整している姿が観察できました。竹のしなりによる「荷物の上方運動」と、歩行者の地面を蹴る(前進)タイミングを上手く合わせていたのです。

農村地域の近代化により、他の運搬手段(バイク、車両)が一般的になっていますが、車両の入ることができない地域では、竹の棒はまだまだ活躍しているようです。

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reference: atlasobscura / written by ナゾロジー編集部
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