トランスジェンダーは脳の遺伝子によって生じることが初めて実証される

biology 2020/02/07
研究を行ったJ・グラハム・タイゼン氏とローレンス・C・レイマン氏 / Credit: Phil Jones, Senior Photographer, Augusta University
point
  • トランスジェンダーが遺伝子によって決まることが明らかになった
  • 性別は「Y」染色体のあるなしだけではなく、複数の遺伝子で決定される

心と体の性別が一致しないトランスジェンダーは、これまで「胎児期に子宮内で浴びるホルモンの異常」や「思春期の環境」に要因があるとされ、遺伝的な研究は行われていませんでした。

しかし近年になって、トランスジェンダー本人の遺伝的な要因に関する研究も行われるようになっています。

既存の研究では再現性などに問題があり十分とは言えませんでしたが、今回の研究で初めて、トランスジェンダーの原因が先天的な脳の遺伝子にあることが判明しました。

本研究によってトランスジェンダーの遺伝的なユニークさが認知され、一層の理解が進むと考えられます。

研究結果はオーガスタ大学のJ・グラハム・タイゼン氏らによってまとめられ、2019年12月27日に学術雑誌「nature」のSCIENTIFIC REPORTSに掲載されました。

The Use of Whole Exome Sequencing in a Cohort of Transgender Individuals to Identify Rare Genetic Variants
https://www.nature.com/articles/s41598-019-53500-y

トランスジェンダーは脳の遺伝子に変異がみられた

右巻きDNA/Credit:pixabay

研究ではまず、30人のトランスジェンダーの男女(生物学的な)からDNAが採取され、非トランスジェンダーの人間との違いが調べられました。

DNAの比較にあたっては、エクソソームシーケンスと言われる、遺伝子のエクソン領域(タンパク質をコードしている部分)を濃縮して解読する方法が行われ、30人ぶんのDNAを素早く読み解くことができました。

結果、トランスジェンダーは、脳内のエストロゲン伝達経路に関与する、19個のDNAが21種類の変異(重複あり)をしていることがわかりました。エストロゲンは女性ホルモンとして知られています。

哺乳類の心の性別は、エストロゲンによって決定される

エストロゲンの構造。小さな分子が脳の性別を決めていた/Credit:wiki

人間以外の9種類の哺乳類と霊長類を使った実験では、これら19個の遺伝子に変異が起こると、脳細胞はエストロゲンの分泌そのものや、分泌されたエストロゲンの認識に異常がおこることが知られています。

結果、オスの場合、脳細胞がエストロゲンを正しく認識できず、脳がオス化することができなくなるのです。

一方メスの場合は、本来は脳細胞にエストロゲンが分泌されないのに、誤って分泌されることでオス性化してしまいます。

人間の場合、これまでの研究知られていたのは、母親の子宮でアンドロゲン(男性ホルモン)に晒されることで、脳が男性化することでした。

しかしこれはあくまで母体の機能に依存した性決定で、胎児の遺伝子によるものではありません。

今回トランスジェンダーの人たちにエストロゲンにかかわる変異がみられたことで、人間の脳の性別決定にも、エストロゲン(女性ホルモン)を介した胎児の遺伝子そのものによって制御されている可能性が高まりました

遺伝子と脳と性別

Credit:depositphotos

今回の研究で、「Y」染色体以外の遺伝子が脳の性別を決めていることが明らかになりました。

トランスジェンダーの人たちの脳は「Y」染色体の有る無しとは独立して、他の遺伝子の働きによって別の性になっていたのです。

また論文でも「単一の遺伝子が性別を決めているのではなく、複数の遺伝子の相互作用によって決まる」と述べています。

誰しも自分の中に異性の要素をかかえていても、おかしくはないのかもしれません。

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reference: eurekalert / written by ナゾロジー編集部

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