犬とは真逆。飼い犬から野生に戻ったディンゴは遺伝子までオオカミ化していた

animals_plants 2020/02/13
ディンゴの顔を映した写真。どことなく日本の秋田犬や柴犬に似ている。ディンゴは有袋類が支配していたオーストラリア大陸で最大の捕食者に君臨している/Credit:depositphotos
point
  • ディンゴはイエイヌとは真逆の、犬の野生化によって誕生した
  • 野生化によってディンゴの遺伝子はオオカミに近くなった

ディンゴはオーストラリアに住むイヌやオオカミの仲間であり、そのシルエットには柴犬に似たなじみ深さを感じさせます。

しかし有袋類の大陸として知られるオーストラリアでは「袋ナシ」の哺乳類であるディンゴは、長く異質の存在でした。

これまでの研究で、ディンゴが「いつ」「どうやって」オーストラリアにやってきたかが調べられてきましたが、明確な答えは得られませんでした。

しかし今回の遺伝学的な研究によって、ディンゴのルーツが明らかになりました。

ディンゴはおよそ8300年前に、イエイヌとは真逆の「犬の野生化」によって、新たに誕生した種だったのです。

数万年前、一度はオオカミからイエイヌとして飼いならされた種が、野生化によって再び別の種になるという、複雑な過程が解明されたことで、生命の進化に対する理解が深まると期待されています。

研究結果は少杰張氏らによってまとめられ、2月3日に学術雑誌「nature」に掲載されました。

Genomic regions under selection in the feralization of the dingoes
https://www.nature.com/articles/s41467-020-14515-6#Sec22

ディンゴの祖先は8300年前にインドネシアの村で飼われていた犬

一番ツリーの上にあるオレンジ色の「W」がオオカミのグループ。「W」以外のグループは全て犬。ディンゴ「D」はツリーの下の方にある赤いグループ。インドネシアの村の犬「IN」が一番下の青いグループで、2つは近縁の関係にあるのがわかる/Credit:nature communications

ディンゴの起源を探るために、研究者たちはまずディンゴの遺伝子をイエイヌと比較しました。

比較することで、数あるイエイヌのなかで、どの犬種がディンゴに近いかを調べようとしたのです。

その結果、ディンゴの直近の祖先は、インドネシアの村で昔から飼われている地元原産のイエイヌであることがわかりました。

おそらく8300年前に人間との関係を断ち切られたことで、ディンゴの食べ物は狩りによって獲得するものとなり、野生化が始まったと考えられます。

またディンゴとイエイヌの「遺伝子の総変化量」を「一世代ごとの平均的な変化量」で割ることにより、ディンゴが野生化した時期を8300年前と推定できました。

このことからディンゴの先祖は、最終氷河期(1万年前に終了)の後にインドネシアからオーストラリア大陸に渡ったと考えられるのです。

野生化によって得たもの、失ったもの

ディンゴの群れ。ディンゴは群れることで、ライバル関係にあった有袋類のフクロオオカミより生存競争で有利になった。/Credit:depositphotos

研究によって、ディンゴはオオカミ化する過程で「デンプン消化能力」「味覚」「神経伝達」にかかわる複数の遺伝子を変化させていることもわかりました

もともとイエイヌは人間の残した穀物の残飯を食べるため、高いデンプンの消化能力を獲得しました。しかしディンゴは野生化する過程で、デンプンを消化するアミラーゼの能力を失い、肉食に戻っています。

ディンゴの味覚遺伝子についても、野生環境に適応するため、美味しいと思えるエサが別物になったようです。

さらに記憶力や空間認知能力を促進する遺伝子の発現活性が大きく低下しており、知能そのものも野生化しているようでした。

これらの変化の結果、ディンゴの遺伝子はイエイヌより灰色オオカミに類似点を多く持つようになり、先祖返りしたのです。

ですが現在、人間によって持ち込まれたイエイヌとディンゴの交配が起き、純粋なディンゴの存在が危機に瀕しています。

オオカミを家畜化したイエイヌが野生化してディンゴとなり、さらに人間の都合でイエイヌとの再度の交配でまた家畜化する…。

もしかするとディンゴは人間と関わってしまったせいで、無限ループにはまってしまったのかもしれません。

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reference: phys / written by ナゾロジー編集部

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