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ゴルフボールみたいな小惑星「パラス」 ボコボコの原因は暴れん坊だから

2021.01.27 Wednesday

2020.02.17 Monday

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南半球(左)と北半球(右)/Credit: Massachusetts Institute of Technology
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  • 火星と木星の間の「小惑星帯」に属する天体「パラス」の高解像度画像が新たに公開される
  • パラス表面には、数多くのクレーターが見られ、頻繁に小惑星との衝突を繰り返していることが分かる

マサチューセッツ工科大学により、太陽系一の「荒くれモノ」の画像が新たに公開されました。

パラス(Pallas)」と呼ばれるその天体は、火星と木星の間に位置する「小惑星帯(アステロイドベルト)」に位置しています。

直径は約512キロに達し、直径1キロほどの小惑星が100万個以上も存在する小惑星帯の中では、ケレス、ヴェスタに次いで3番目に大きな天体です。

南米チリにある超大型望遠鏡「VLT」に搭載されたハイコントラスト撮像装置「SPHERE」により、高解像度の鮮明な画像が実現しています。

それを見ると、表面に数多くのクレーターが散見され、ゴルフボールのように変形していることが分かりました。

このことから、パラスは、他の小惑星と何度も衝突を繰り返していることが伺えます。

研究の詳細は、2月10日付けで「Nature Astronomy」に掲載されました。

The violent collisional history of aqueously evolved (2) Pallas
https://www.nature.com/articles/s41550-019-1007-5

衝突回数が多いのはなぜ?

パラスは、1802年の発見以来、奇妙な軌道を描いて飛翔していることで有名ですが、今回の研究により、その詳しいルートが明らかにされています。

パラスが属しているのは、下の画像に見られる火星と木星の間の「小惑星帯」です。

新たに採取されたデータを分析すると、小惑星帯に属するほとんどの天体は、太陽面に対し水平か、最大でも30度以下を保っています。ところが、パルスは、太陽面に対し、34.837°も傾いていることが判明しました。

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小惑星帯/Credit: ja.wikipedia

つまり、パルスは、小惑星帯のメインルートを大きく逸れて、斜め方向に飛翔しているのです。

小惑星帯に属する天体は、どれも似た軌道を描くため、互いにぶつかることもそう多くはありません。しかし、パラスは、軌道が大幅に傾いていることで、2つのポイント(小惑星帯を横断する2地点)でメインルートにぶつかるのです。

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「パラス」の軌道傾斜、約4年半(1686日)で太陽を1周する/Credit: Osamu Ajiki/AstroArts, Ron Baalke/JPL

研究主任のマイケル・マーセット氏は「そのせいで、小惑星帯を飛ぶ他の天体とぶつかり、表面に数多くのクレーターが残る」と指摘します。

さらに、小惑星同士がぶつかると、その衝撃により飛翔スピードが落ちるのですが、パラスは、その巨大さのおかげで失速することがありません。

例えるなら、高速道路を走るトラックに石つぶてをぶつけるようなものです。

これが、数十億年にわたり続けられたことで、現在のようなゴルフボール状に変化したと考えられます。

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パラスの軌道(青)、太陽(中心)、木星(外側の赤)/Credit: ja.wikipedia

画像分析によると、パラス表面には、直径30キロ以上のクレーターが少なくとも36個あり、中には、幅40キロ級の小惑星とぶつかってできたとされる、直径およそ400キロのクレーターも赤道付近に発見されました。

サイズこそ、ケレスやヴェスタに劣るものの、天体との衝突回数で言えば、それらの3倍以上に達するそうです。

まさに、「太陽系一の荒くれモノ」と呼ぶにふさわしいでしょう。

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