観測史上初!銀河系の外で「酸素分子」がみつかる

space 2020/02/19
超大質量ブラックホール(クエーサー)の上下に向かってジェットが放出されている/Credit:depositphotos
point
  • 別の銀河系に酸素分子があることがわかった
  • 酸素は宇宙空間を浮遊する氷に閉じ込められている
  • 超大質量ブラックホールから吹き出すジェットが氷を砕き、自由になった原子は結合して分子になる

宇宙に存在する多くの酸素は、地球上の生命が呼吸に使う分子状態の酸素(O2)ではなく、原子状態(O+)で存在しています。

また金星や火星といった身近な惑星の大気にも、分子状態の酸素はほとんどありません。

私たちの地球も、大気中の酸素濃度が現在のように20%を超える濃度に達したのは、生命の行う光合成によって二酸化炭素分子から酸素分子が作られるようになったからなのです。

ゆえに、地球とよく似た環境の惑星において高濃度の酸素濃度が確認されれば、生命が存在する確率が飛躍的に高まるとされます。

今回、天文学者たちによって、私たちの銀河から5.6億光年離れた位置にある「Markarian 231」と呼ばれる銀河にある超大質量ブラックホールの周辺にも、分子状の酸素があることが観測されました。

天の川銀河系の外に酸素分子の存在が確認されたのは観測史上初めてです。

本来、ブラックホールと「生命」や「酸素」といった単語は結びつきにくい印象がありますが、一体どのような仕組みで酸素分子が作られているのでしょうか?

研究結果は上海天文台中国科学院のJunzhi Wang氏らによってまとめられ、1月30日に学術雑誌「Astrophysical Journal」に掲載されました。

Molecular Oxygen in the Nearest QSO Mrk 231
https://iopscience.iop.org/article/10.3847/1538-4357/ab612d

宇宙では酸素分子は貴重

Ctrdit:pixabay

酸素は水素とヘリウムに次いで宇宙で3番目に多い元素で、132億光年離れた銀河でも電離した酸素原子は確認されています。

しかし分子状の酸素(O2)を求めて太陽系の外に目をむけると、急に探索が難しくなります。

これまで行われた天の川銀河系全体の探索でも、ローオフィウチ雲とオリオン星雲の2ヶ所からしか分子状の酸素の存在は確認されませんでした。

その理由は、酸素原子が水分子と塵粒状に凍結して、宇宙空間から一掃されてしまったからだと考えられています。

宇宙空間では、思った以上に酸素分子は貴重なのです。

「Markarian 231」銀河で酸素分子が生じた仕組み

巨大ブラックホール(左)と普通のブラックホール(右)の違い。巨大ブラックホールは吸い寄せた物体の一部をジェットとして上下に吹き出す。このジェットが酸素を含んだ塵の塊に命中すると、酸素分子がうまれる/Credit:depositphotos

そんな貴重な酸素分子ですが、今回Markarian 231銀河にある超大質量ブラックホール周辺で大量に観測されました。

上の図のように、超大質量ブラックホール(左)は吸い寄せた物体の一部を、ジェットとして上下に何万光年にも渡って吹き出します。

一方で普通のブラックホール(右)にも同じジェットの吹き出しがありますが、その勢いは非常に限られているのです。

超大質量ブラックホールが放つ強力なジェットが周辺の酸素原子を取り込んだ塵に命中すると、衝撃によって水氷が砕けます。

そして内部に捉えていた多数の酸素原子が開放され、酸素原子同士の結合によって純粋な分子が形成されます

結果、ブラックホールの上下の区画に酸素分子が豊富な区域が誕生するのです。

これまでは、酸素は生物の存在を示す証拠だと考えられてきましたが、超大質量ブラックホールはまさに非生物的な力技で、宇宙空間に酸素分子を作っていたと言えます。

ですが、この力技は思わぬ副産物を生む可能性があります。

ジェットが塵に命中して生まれた酸素には冷却材としての作用があり、周囲の高温ガスから熱を奪って固形化を推し進めるのです。

そして熱いガスが冷えて小さな粒子が増えていくと、それら粒子がぶつかりあいながら成長し、星が生まれます。

超大質量ブラックホールが生み出す酸素は、生命を生み出す代わりに星を生み出していたのです。

ブラックホールの周辺は住めるのか?映画『インターステラー』を発端にした宇宙研究

reference: interestingengineering, sciencenews / written by ナゾロジー編集部

あわせて読みたい

SHARE