- アフリカ原産の「Turquoise killifish」という魚には、胚の成長を数ヶ月〜数年も止めることのできる能力がある
- そのメカニズムを研究した結果、筋肉や代謝の機能を健康に保ちながら、細胞分裂をストップさせていることが判明
生物界には、胚の成長を一時的に止めて、誕生を遅らせることのできる種が存在します。
こうした能力は「発生休止 (Diapause)」と呼ばれており、このメカニズムを解明できれば、人に適応して、寿命を延ばすことも可能でしょう。
その鍵を握っているのが、アフリカ(ジンバブエとモザンビーク)に生息する「Turquoise killifish」という小さな魚です。
この魚も同じ能力を持っており、卵の中の胚の成長を数ヶ月〜数年にかけて止められます。
そして今回、アメリカ・スタンフォード大学により、Turquoise killifishの発生休止に関するメカニズムの秘密が新たに解明されました。
研究の詳細は、2月21日付けで「Journal Science」に掲載されています。
https://science.sciencemag.org/content/367/6480/870
健康を保ちつつ「老化」を止める?
Turquoise killifishは、アフリカに毎年訪れる短い雨期により一時的に出現する池に生息しています。干ばつが訪れと池は消えてしまうので、その間(30〜40日)に、子孫を残さなければなりません。
無事に卵を産んだ親は、池の消失とともに死んでしまいます。
一方の卵は、池が消えても、乾燥に強い特徴を備えているため、泥の中で胚の成長を続けることが可能です。その後、再び雨期が訪れて池ができたタイミングで生まれるのですが、干ばつが長く続く場合は発生休止をして、生まれる直前の状態で待機します。
彼らの発生休止は、数ヶ月から最大で数年も続けられるそうです。
今回、研究チームがTurquoise killifishの生態を調査した結果、発生休止が行われても、生後の発育状態や生殖能力、寿命に何らの害悪もないことが分かりました。
その中で明らかにされた発生休止のメカニズムは以下の通りです。
まず、発生休止を行うと、胚の中で「CBX7」と呼ばれるタンパク質の生産が増加します。これが「ヒストン」という別のタンパク質と結合することで、遺伝子の多くを活性状態にして、筋肉の衰退を抑え、代謝を維持することが可能になります。
つまり、発生休止は、筋肉や代謝を健康に保ちながらも、老化を意味する細胞分裂を止めてしまうのです。
この発生休止のメカニズムを人に応用できれば、画期的な老化予防法が誕生するかもしれません。
もちろん、人体はこの魚以上に複雑なつくりをしているので、応用までには数多くの解決すべき障害があるでしょう。