恐竜は「酸性雨」で絶滅した!? 環境激変の証拠が見つかる

geoscience 2020/03/03
Credit:depositphotos
point
  • 白亜紀大量絶滅の原因となった小惑星衝突について、環境激変の詳細が明らかにされた
  • K-Pg境界から銀・銅の微粒子が大量に発見され、これは大規模な酸性雨があったことを示唆している
  • 酸性雨が降ったという説はこれまでにもあったが、具体的な証拠が発見されたのは今回が初めて

地球ではこれまでに、ビッグファイブと呼ばれる5つの大規模な生物大量絶滅が起こっています。

その中で最後に起きたのが、約6600万年前に起きた恐竜を中心とした生物の大量絶滅です。

この原因は、小惑星の地球衝突だったと言われています。これは地質の調査からも明らかにされていることです。

小惑星の衝突は地球に様々な環境の激変をもたらしたと考えられています。

しかし、具体的に何が起きたかについては、推測の域を出ていません。なぜなら、こうした環境激変は極めて短期間に起こっており、地層にはその様子が記録されていないと考えられていたためです。

新しい研究は、この大量絶滅期に当たる白亜紀-古第三紀(K-Pg)境界の地層サンプルを、量子力学の研究などでよく耳する粒子加速器で分析しています。

その結果、世界で初めて、この時期に大規模な酸性雨が降り注いでいたという具体的な証拠を発見したのです。

この研究は、筑波大学・高知大学・京都大学、および海洋研究開発機構・日本原子力研究開発機構・量子科学技術研究開発機構・高輝度光科学研究センターの研究者らによる研究チームにより発表され、アメリカ地質学会によって発行される査読付き科学雑誌『Geological Society of America Bulletin』に2月5日付けで掲載されています。

Enrichment of chalcophile elements in seawater accompanying the end-Cretaceous impact event
https://doi.org/10.1130/B35403.1

最後の大量絶滅

地球では幾度も、生物の大量絶滅が起こっています。

人間が生きる現代も大量絶滅期なんじゃないの? という説もありますが、地質学的に最後の大量絶滅と考えられているのが、約6600万年前K-Pg境界で発見された生物の大量絶滅です。

これは一般に恐竜の絶滅として知られています。

ここでは生物種の実に70%以上、個体数でいうと99%近くが死滅したと言われています。

この原因となったのが、メキシコのユカタン半島に衝突した直径10kmにも及ぶ巨大隕石だと考えられています。

メキシコ・ユカタン半島のチクシュルーブ・クレーター。衛星写真(左)。重力分(右)。/Credit:NASA,USGS

K-Pg境界では、隕石などに多く含まれるイリジウム(親鉄元素)が高濃度で検出されています。これは地表近くの岩石にはほとんどない元素のため、隕石落下の証拠とされています。

また、隕石の衝突による衝撃だけで大量絶滅が起きたとは考えにくいため、大量絶滅はこれに起因した地球環境の激変が原因だろうと考えられています。

その内容は、舞い上がった粉塵による太陽光の遮断、酸性雨、岩石が蒸発したことによる温暖化、紫外線透過などです。

ただ、これらの現象は非常に短時間で起きたため、その様子を地層の記録から見つけ出すことは難しいと考えられていました。

そのため、環境の激変については推測の域を出ず、具体的にどのような環境変化が起こったかの証拠は、これまで得られていなかったのです。

粒子加速器の分析

そこで今回の研究に用いられたのが、マイクロメートルスケールまで分析が可能な「大型放射光施設 SPring-8」です。

SPring-8(Super Photon ring-8 GeV)は、兵庫県にある日本の粒子加速器。簡単に言うと、非常に高性能の顕微鏡です。

Credit:Wikipedia Commons

研究チームは、デンマークの海岸沿いに露出した断崖からK-Pg境界層の試料を採取し、このSPring-8で細かく分析しました。

すると、そこには銀や銅に富んだ微粒子が高濃度で検出されたのです。それは、隕石由来と考えられる量より1~2桁も高濃度でした。

銀や銅は酸に溶けやすい元素です。これら粒子の存在は、大規模酸性雨がこの時期に発生していたことを示唆しているのです。

明らかになる隕石落下直後の世界

巨大隕石が衝突した際、隕石に含まれていたCO2や三酸化硫黄は高温に加熱され、硫酸エアロゾルを形成したと考えられます。

これは大気中で雨水に溶けて、激しい硫酸の雨を降らせました。

また、飛び散った隕石の破砕岩片は、地上に降り注いだ際、空気の断熱圧縮という現象で加熱されて、一酸化窒素を生成しました。

これは最終的に硝酸エアロゾルとなり、これも激しい硝酸の雨となって地上に降り注いだと考えられます。

巨大隕石落下直後の大規模酸性雨と高濃度銀・銅粒子の生成メカニズム。/Credit:筑波大学プレスリリース資料

これらの激しい酸性雨が、地上の銀や銅を溶かして河川を通じて海に流れ出し、今回検出された高濃度の銀・銅粒子を形成したのです。

これが海洋の環境にも影響を与え、海に住む恐竜やアンモナイトなどの絶滅にも関与したのでしょう。

研究者たちは、今回の発見から、他の地域のK-Pg境界層試料を分析することで、この時期に発生した酸性雨の規模や継続時間まで、定量的に明らかにできるだろうと考えています。

酸性雨の被害を受けた森。/Credit:Lovecz,Wikipedia Commons

現代でもたびたび環境問題にあがる酸性雨ですが、恐竜の絶滅にも関連していたのは確かなようです。

地球規模で激しい酸性雨にさらされた世界とは、想像すると恐ろしいですね。

Tレックスのイトコである新種の化石「死神」 が発見される

reference: 筑波大学, sciencedaily/ written by KAIN
あわせて読みたい

SHARE

TAG