寝たきり患者の「意思」がわかる脳内スキャナーが開発される

technology 2020/03/08
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point
  • 脳障害や身体麻痺した人の意思が分かる脳内スキャナーが開発される
  • 患者は脳内スキャナーを使用して、医師の質問に「はい / いいえ」のどちらかで返答できる

人が重度の脳障害や身体麻痺を負うと、コミュニケーションが取れなくなります。ずっと寝たきりで、意識の有無さえ判断できない場合もあるでしょう。

そのような場合、家族や医師は今後の治療方針を決定しづらいと感じるでしょう。

また、障害を負った本人も、延命治療についての自分の願いを伝えることができません。

このようなケースに対処するため、カナダの西オンタリオ大学のエイドリアン・M・オーウェン氏は、コミュニケーションが一切取れない人の意思を確認できる脳内スキャナーを開発しました。

この装置によって、患者は「はい / いいえ」の2択で、自分の意思を伝えることができます。

研究の詳細は2月18日「Frontiers in Neuroscience」に掲載されました。

Assessing Time-Resolved fNIRS for Brain-Computer Interface Applications of Mental Communication
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fnins.2020.00105/full

脳内スキャナーは脳活動をキャッチする

Credit:Adrian M Owen

オーウェン氏は、寝たきりでコミュニケーションの取れない患者たちの幾人かは意識を保っていることに気付いていました。

そして、彼らの脳活動をスキャンすることによって、その意思を確認する方法を考案しました。

新しく開発された技術は、患者がベッドに寝たままでも使用可能です。頭にヘッドセットを装着するだけで脳内をスキャンできます。

脳内スキャナーには、「NIRS脳計測装置」が利用されています。これは、近赤外線を利用した装置です。

近赤外線は頭皮と頭蓋骨を浸透して、脳に届きます。そして、その反射光を頭皮上で測定することで、脳活動を視覚化できます。

この方法は、脳内情報のごく一部しか視覚化できませんが、患者が脳内で思い浮かべたイメージをキャッチすることはできます。

この装置を応用するなら、「患者の脳内イメージの有無によって、意思を確かめる」ことが可能になります。

テニスプレイのイメージで返答する

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まず、大前提として、患者は意識を保っていて、医師の言葉が聞こえていなければいけません。

そして、患者は、医師の質問に「はい / いいえ」の2択で返答できます。この返答には脳内イメージを活用します。

医師は、患者が「はい」と答えたいときには、「自分がテニスをしている状況を想像する」よう指示します。そして、「いいえ」と答えたい場合には、「何も考えない」よう指示します。

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脳内スキャナーは、動きに関係する脳の信号を感じ取り、「テニスプレイを想像した」ときに点灯するようになっています。

医師たちは、質問と信号のキャッチを繰り返すことで、患者の意思を把握できます。

実際に、脳損傷の無いボランティアたちでテストを行ったところ、4分の3が質問に正確に回答できたようです。

さらに、研究チームは、脳内スキャナーを使用して、完全麻痺状態にある人と話すことにも成功しました。

オーウェン氏によると、脳内スキャナ―は、患者の願いを汲み取るだけでなく、今後の症状の改善に関する情報も明らかにしてくれるようです。「脳スキャナ―の指示に反応できる人は回復する可能性が高い」とのこと。

動けない患者の意思を知ることができるのは、医学と科学の大きな進歩の結果だと言えるでしょう。

ただし、この方法には、まだ多くの考慮すべき点が残っています。

テストで、4分の1のボランティアが正確に回答できなかったわけですから、まだ「延命治療」などの重大な質問を投げかけるわけにはいきません。

また、「患者が自分の状況や質問の意味を本当に理解しているか?」といった疑問点も残っています。安楽死などの意思確認に採用するには、まだ時間がかかりそうです。

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reference: newscientist / written by ナゾロジー編集部
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