ついに恐竜の化石からDNAとタンパク質が初検出される

history_archeology 2020/03/03
今回の研究に使われたヒパクロサウルスのイメージ/Credit:The Dinosaur Database
point
  • 恐竜の軟骨化石からDNAとタンパク質が検出された
  • DNAとタンパク質は予想よりながく構造が保てる可能性がある

映画「ジュラシックパーク」に登場する恐竜たちは、琥珀の中に封じられた「恐竜の血を吸った蚊」から抽出したDNAを用いることで復活を果たしました。

しかし今回、国際的な研究チームによって7500万年前のヒパクロサウルスの化石から直接、DNAとタンパク質を検出することに成功しました。

恐竜の化石から汚染のないDNAとタンパク質が発見されたのは初めてです。

今まで検出不可能とされてきた恐竜のDNAとタンパク質を、研究者はどのようにして発見したのでしょうか?

研究結果はノースカロライナ州立大学のアリダ・M・バイユール氏らによってまとめられ、1月12日に学術雑誌「National Science Review」に掲載されました。

Evidence of proteins, chromosomes and chemical markers of DNA in exceptionally preserved dinosaur cartilage
https://academic.oup.com/nsr/advance-article/doi/10.1093/nsr/nwz206/5762999

研究者たちは軟骨化石に目をつけた

幼いヒパクロサウルスの後頭部の化石/Credit:National Science Review

バイユール氏らは以前より、化石に保存された恐竜のDNAを探し求めてきました。

しかしDNAの半減期は512年です。計算上、680万年で完全に分解されてしまいます。

また細菌などによる生物汚染に化石が晒された場合には、さらに検出は困難になります。

そのため、これまで化石から発見された最古のDNAは70万年前の馬の先祖からでであり、最古のタンパク質は170万年前のサイの先祖とされてきました。

しかしバイユール氏らは、特定の条件下ならば、DNAやタンパク質は限界を超えて構造を保てると考えました。

そこでバイユール氏らは1980年代に発見され、永らく保管されてきた、生まれたての幼い恐竜の後頭部の頭蓋骨に目を付けました。

この部分の骨は生まれた直後は軟骨であり、成長と共に硬い骨に変っていきます。

軟骨の細胞は生きている一方で、骨になった細胞は死んでしまいます。

そのため幼い恐竜では、軟骨細胞の多くが骨になる準備のために「特殊な死にかけ」の状態にあったのです。

バイユール氏らはこの特殊な状態が酸素濃度やミネラル濃度の差をうみ、骨とは異なる化石化の過程をたどらせ、結果として常識外れな保存を可能にすると考えました。

軟骨化石からのDNAとコラーゲンの検出

軟骨化石から採取された細胞を左はPIで、右はDAPIで染めている。矢印の部分が染まっており、DNA断片があることを示している/Credit:National Science Review

実験にあたり、バイユール氏らはDNAを検出する手段として、ヨウ化プロピジウム(PI)と4 ‘、6’-ジアミジノ-2-フェニルインドール二塩酸塩(DAPI)を使用しました。

PIは死んだ細胞の二重らせん構造を認識した場合、DAPIはDNAの3つ連続したAT塩基配列を認識した場合、それぞれDNAに吸着して、顕微鏡下で染色されて見えます。

研究者によって染色が行われた結果、どちらの試薬からでも反応がみられ、軟骨化石におけるDNA断片の存在が強く示唆されました。

軟骨化石の抗体染色。粒上の構造は細胞。青く染まっている部分にコラーゲンがある/Credit:National Science Review

またタンパク質の検出にあたっては、ニワトリから作られたコラーゲン抗体(Ⅱ型)とアルシアンブルーが用いられました。

コラーゲンはタンパク質の一種であり、軟骨化石にコラーゲンがあった場合、コラーゲン抗体が吸着して、アルシアンブルーによって青く染色されます。

結果は予想通り、軟骨化石は青く染色され、コラーゲンが存在している事実が示唆されました。

DNAは予想より長期間配列を維持できる可能性がある

大人のヒパクロサウルスの頭蓋骨Credit:Ryan Somma

今回の研究ではDNA断片とコラーゲンの存在のみが確認されましたが、今後塩基配列の決定が期待されています。

複数のDNA断片が保存されていれば、恐竜の遺伝子の多くの部分を解明できるかもしれないからです。

アルファベットで簡単に例えれば「ABCDEFG」という配列と「EFGHIJK」という配列が発見された場合、「EFG」部分の重なりをヒントに、最終的には「ABCDEFGHIJK」という、より長い配列を決定できるからです。

常識を覆す研究結果であるため疑いの声も寄せられていますが、これが事実であれば、DNAの塩基配列は数千万年という予想より遥かに長期間保存できることになります。

今後、軟骨化石にターゲットを絞った研究から多くの恐竜の遺伝子が発見されるかもしれません。

またDNAがこれほど長期保存できれば、隕石の落下などにより地球から飛び出した生命のDNAが、膨大な時間をかけて宇宙を彷徨い、命の種として他の惑星に根付く…といったことも想像してしまいますね。

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reference: phys / written by ナゾロジー編集部
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