木造建築を食い荒らす危険生物として知られる「シロアリ」。
日本でもなじみ深い生物ですが、世界最大のシロアリの巣はどれくらい大きいか知っていますか?
ブラジル北東部の乾燥地帯にあるその巣の大きさは、私たちの予想をはるかに超えます。
地上には高さ3メートルほどのアリ塚が無数に建てられているのですが、地下に広がる総面積は、なんと日本本州の大きさにも匹敵するというのです。
また、アリ塚から採取した土のサンプルを調べたところ、最初に建築が始まったのは約3280年前で、その後の増築は690年ほど前まで続いていることが分かっています。
歴史やサイズを含め、間違いなく世界最強の「シロアリ帝国」と呼べるでしょう。
しかも、帝国はいまだ滅びておらず、シロアリたちが現在も住んでいるのです。
アリ塚は2億基以上!
専門家が地上調査および衛星画像のデータをもとに算出した結果、アリ塚は全部で2億基を超えることが判明しています。
アリ塚そのものは巣になっておらず、シロアリは住んでいません。それらは、シロアリが巣を掘る時に運び出した土からなっています。
アリ塚ひとつにつき、中型ダンプカーが一度に積載できるほどの土量があり、2億基すべてを合わせると、ギザの大ピラミッド4000個分(!)、日本本州(約231平方キロメートル)にも匹敵します。
これは紛れもなく、単一の昆虫により築かれた地球史上最大の生態系です。
この巨大帝国を築いたのは、ブラジル原産のシロアリ「Syntermes dirus termite」。
これほどまでに彼らの巣が大きくなったのは、現地の乾燥した気候や粘土質の土壌が農耕に適していないため、人間が侵入してこなかったからでしょう。
それぞれのアリ塚には地下に向かってまっすぐ伸びる一本の中央トンネルがあり、これが地下通路に接続されていました。
他地域で見られるシロアリの塚とは違って内部構造がなく、換気口などもありません。
また、地下帝国に水平に広がる回廊には枯葉やシロアリの子ども部屋などが発見されていますが、肝心の女王が暮らす王宮はまだ見つかっていません。
食料調達に出かける際は、10〜50匹が一個小隊となって、一時的に掘った直径8ミリほどの穴から現れます。また、穴は使うたびに必ず閉じられているとのこと。
シロアリたちは今なお帝国に住んでいるのです。
もはや全盛期の栄華は去ってしまったのかもしれませんが、人間が侵略してこない限り、シロアリ帝国は存在しつづけるでしょう。