光エネルギーで有機廃液を浄化、同時に水素を取り出す技術開発に成功

chemistry 2020/03/15
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point
  • 鉄サビに光エネルギーを当てると浄化作用を生み出す
  • 浄化時には水素が生成されるので、エネルギー生産に活用できるかもしれない

産業廃液の処理とクリーンなエネルギー生産は、快適な生活を続けていくために不可欠な要素です。

東京理科大学基礎工学部材料工学科の勝又健一准教授らの研究グループは、鉄サビに光を照射することにより、工場や農場から排出される有機廃液の浄化に成功しました。

同時に、エネルギー源として有用な水素を大量に生産できる可能性もあります。

無限に存在する光エネルギーを利用した浄化・生産システムの開発は、将来的に様々な可能性を広げそうです。

研究の詳細は、「Chemistry – A European journal」に掲載されました。

Hydrogen Production System by Light‐Induced α‐FeOOH Coupled with Photoreduction
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1002/chem.201903642

人工光合成?「光触媒」とは

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「光触媒」とは、吸収した光をエネルギー源として、通常では進行しない化学反応を促進させる物質のことです。

植物による光合成は、いわば天然の光触媒反応と言えるでしょう。

研究者たちは、同様の反応を「人工的に」引き起こそうとしています。人為的に手を加えることで光触媒となる物質を模索しているのです。

光触媒反応の大きなメリットには、浄化作用があります。

光触媒に光が当たると、水や酸素と反応して活性酸素が発生します。

活性酸素には極めて強い酸化力があるので、ほとんどすべての有機化合物は酸化分解してしまいます。つまり、抗菌、汚れ分解、脱臭の機能があるのです。

また、光触媒はクリーンなエネルギー生成も可能です。光触媒による化学反応によって生成できる水素は、燃料電池などのエネルギー源として有用です

現在、光触媒として実用化されている「酸化チタン」は、これらの性質を利用して、ガラスやタイルのコーティング、空気清浄機のフィルターなどに使用されています。

非常に有用な光触媒ですが、今回、研究者たちは新たな光触媒を発見しました。

「鉄サビ」と光エネルギーで浄化と水素生成

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新しい研究では、自然界に豊富に存在している「鉄」に注目し、鉄を原料としたオキシ水酸化鉄(FeOOH)、いわゆる「鉄サビ」を光触媒として機能させることに成功しました。

実験では、模擬汚染水としてメタノール水溶液が準備されました。

メタノール水溶液にオキシ水酸化鉄を入れ、水銀キセノンランプによる光を照射すると、光触媒反応が起こり水素が発生しました。

発生した水素の一部は、メタノールではなく水から発生したものでした。つまり、メタノールを分解して水素を取り出すだけでなく、水からも水素を生成しているのです。

水素が発生しやすい条件を調べたところ、溶液が酸性であるほど水素の発生量が多くなることも分かりました。

これらの結果から、「鉄サビ」が、光エネルギーによって模擬汚染水を浄化し、それに伴い水素を生成したと言えます。

光触媒としてポピュラーな酸化チタンと比較すると、有機化合物の分解に伴う水素生成量は25倍にもなっていました。

今回の研究成果の将来的な可能性について、勝又准教授は「オキシ水酸化鉄が可視光で同じような活性を示すように材料創製することで、太陽光と鉄サビで汚染された水を浄化し、安心・安全な水の確保が可能となるだろう。環境浄化とエネルギー生産を兼ね備えた材料開発の基となる研究だと考えている」と話しています。

このように、身近でありふれた物質から光触媒が発見され、研究が進んでいくなら、地球規模の環境・エネルギー問題の根本的な解決策の獲得につながるでしょう。

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reference: 東京理科大学 / written by ナゾロジー編集部
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