- 世界で2例目となるHIV完治が報告される
- 今回のケースでは、HIV定着を防ぐ遺伝子変異を持つドナーの骨髄を移植することで成功した
イギリス・ケンブリッジ大学により、世界で2例目となるHIV患者の完治が報告されました。
現在の医療では、HIVを完全に排除する治療法はなく、薬で病気の進行を抑えるのが現状です。
これまでのHIV完治報告は、2011年のアメリカ人男性ティモシー・ブラウンさんの一例のみでした。
研究主任のラヴィンドラ・グプタ氏は「今回、HIVを克服した患者には骨髄移植という措置がとられました。術後30ヶ月にわたる追跡調査の結果、HIVの再発が認められないことから完全に完治したと言える」と話します。
研究の詳細は、3月10日付けで「The Lancet HIV」に掲載されています。
https://www.thelancet.com/journals/lanhiv/article/PIIS2352-3018(20)30069-2/fulltext#%20
「HIV」と「エイズ」は何がちがう?
「HIV」と「エイズ」は同じ場面でよく用いられますが、意味合いは異なります。
一言で言うと、HIVはエイズを引き起こすウイルスのことで、エイズはHIVによって生じる病気状態のことです。
具体的に、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)は、体を細菌やカビなどの病原体から守る「Tリンパ球」や「マクロファージ(CD4陽性細胞)」に感染するウイルスを指します。
つまり、体内にある免疫システムを壊すウイルスです。
そして、ウイルス感染後、HIVが増殖していく中で発症する病気状態を「エイズ(後天性免疫不全症候群)」と呼びます。HIVにより発症する疾患は主に20ほどありますが、そのどれかを発症した時点でエイズ診断されます。
HIVは血液や精液、膣分泌液、母乳に含まれるため、主な感染経路は、性的感染・血液感染・母子感染の3つです。
先述したように、現段階でHIVを完全除去できる治療法はなく、抗HIV薬によって増殖を抑え、エイズ発症を防ぐしかありません。