現代の狩猟採集民族が健康な理由は「しゃがむ」姿勢にあった

life 2020/03/22
研究に協力したハドザ族の男性 /Credit: Credit: David Raichlen.
point
  • 現代の狩猟採集民も先進国の現代人と同じく、座りすぎの状態にあった
  • しかし、座りすぎに伴う疾患はまったく見られない
  • その理由は、先進国のように椅子に座るのではなく、「しゃがむ」ことにあった

「座りすぎ」は、現代人が抱える健康問題のひとつです。

座る時間が長いほど、健康への害悪も増え、背痛や静脈瘤、糖尿病の発症リスクが高まります。特に先進国では、インターネットの普及とともにデスクワークが急増し、座りすぎが蔓延しています。

先進国に比べると、いまだに狩猟採集をして暮らす民族には、座りすぎ問題は皆無と思われるしょう。

ところが、南カリフォルニア大学の研究によると、ある民族の座る時間は、先進国に住む現代人とまったく変わらないことが分かったのです。

しかし、問題はそこではありません。

注目すべきは、座る時間が同じにもかかわらず、原始民族が非常に健康であるという点です。

そして研究チームによると、原始民の健康の秘密は、座る時間ではなく、座り方に隠されていました。

研究の詳細は、3月9日付けで「PNAS」に掲載されています。

Sitting, squatting, and the evolutionary biology of human inactivity
https://www.pnas.org/content/early/2020/03/03/1911868117

世界で最も「座りすぎ」なのは日本人

座りすぎは、飲酒や喫煙に比べると軽視されがちですが、同じくらい危険です。

運動不足による血流や代謝の悪化はもちろん、脳梗塞や心筋梗塞、糖尿病、がん、認知症などの発症リスクを高めます。

WHO(世界保健機関)の調べでは、1日の座位時間が4時間未満の成人に比べ、11時間以上座っている人は死亡リスクが40%も高いことが分かっています。

Credit: depositphotos

また、座りすぎは、体だけでなく心にもダメージを与えます。

例えば、1日12時間以上座っている人は、6時間未満の人に比べ、精神疾患の発症率が3倍も高いのです。座りすぎによるメンタルの悪化は、うつ病や自殺願望にもつながりかねません。

そして、驚くことに、座る時間が世界で最も長いのが、日本人の平均7時間なのです。

日本人のストレス過多や自殺率が高いのは、座りすぎにも一因があるのかもしれません。

原始民族も「座りすぎ」だった

座りすぎに関連する疾患は、先進国の現代人に特有のもので、現生する狩猟採集民にはまったく見られません。

今回、研究チームは、原始民族の健康の秘密を探るため、タンザニアに住む狩猟採集民のハドザ族に協力してもらいました。実験では、彼らにGPSを装着して1日の運動量を計測しています。

結果は、前予想の通り、狩猟採集に伴う高い運動量が確認されましたが、意外だったのは休息時間も多かったことです。特に座る時間は、先進国の現代人と同じくらいで、最長9〜10時間に達していました。

それでもなお、ハドザ族には座りすぎによる疾患がほとんど生じません。

その理由は、ハドザの休息姿勢が椅子に座るのではなく、「しゃがむ」ことにあったのです。

健康の秘密は「しゃがむ」にあり?

研究チームは、特別な装置を用いて、しゃがんだ状態での下肢の筋収縮を測定しました。すると、椅子に座った状態よりもはるかに筋力を要することが分かっています。

これは、ハドザ族が休息姿勢にありながらも、筋肉に負荷をかけていることを示します。

これとは対照的に、椅子に座る状態は、楽ですが、筋力をほとんど使いません。特に、腹筋に力が入らないことで、腰痛や背痛、姿勢の悪化が起きやすい状態にあります。

ハドザ族 /Credit: Credit: David Raichlen.

一方で、研究主任のDavid Raichlen教授は「私たちが座る姿勢をしゃがむに変えても、健康面での効果はないだろう」と指摘します。

ハドザ族とは、生活スタイルも食べ物もまったく違うので、しゃがむに変えたところで何も変わりません。

それよりもむしろ、座る時間を短くすること、30分〜1時間ごとに立って、ストレッチや軽い運動をする方が効果的でしょう。

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reference: zmesciencephys.orgsports / written by くらのすけ
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