まっすぐ地球に向かってジェット放射する超古代の大質量ブラックホールの謎

space 2020/03/15
地球に向かってジェット噴射するクエーサー。ブレーザーのイメージ画。/Credit:MEDIA INAF
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  • ブレーザーは活動銀河核の超大質量ブラックホールのジェットが、地球に向いているタイプの天体
  • 130億光年というこれまでで、最遠の距離にあるブレーザーが発見された
  • 宇宙誕生から10億年未満の時代に、活動銀河がすでに多数存在していた証拠になる

宇宙で見つかる天体の、地球に対してバラバラな方向を向いています

銀河はよく知られている通り円盤型をしていますが、クエーサーのような非常に明るい活動銀河核が、上の画像のように渦巻く中心部を真っ直ぐ地球に向けていた場合、それをブレーザーと呼びます

クエーサーの中心には太陽の何十億倍という、とんでもない質量を持つ超大質量ブラックホールが存在していて、そこからは光速に近い勢いでジェットの放射が行われる場合があります。

ブレーザーの場合、ジェットは真っ直ぐ地球に向かって発射されるのです。これは非常に貴重な観測対象です。

新しい研究は、そんなブレーザーでもこれまでで最遠のものを発見したと報告しています。宇宙で遠くの天体は、それだけ古代に存在した天体ということになります。

今回発見されたブレーザーは、130億光年の彼方に存在していて、それは宇宙誕生から10億年未満に生まれた天体であることを意味しています。そんな太古に地球に向けて放たれたジェットが、今地球で観測されているというのです。

この研究は、イタリア・ミラノの国立天体物理学研究所の研究者でインスブリア大学の博士課程学生Silvia Belladitta氏率いる研究チームより発表され、学術雑誌『Astronomy & Astrophysics』より3月6日付けでオンライン公開されています。

正面を向けた銀河

今回とは別の正面を向けた銀河UGC6093の画像。/Credit:ESA/Hubble & NASA

今回発見された活動銀河は、「PSO J030947.49 + 271757.31」と呼ばれています。座標を元に名付けられるので非常に呼びづらいですが、そこは我慢しましょう。

活動銀河と呼ばれるタイプの電波からガンマ線まで、非常に幅広い波長の電磁波を放射する、大きなエネルギーを秘めた銀河です。

中心の活動銀河核には、太陽の数十億倍以上の質量を持った超大質量ブラックホールが存在しています。放射されるエネルギーはここに作られる降着円盤の摩擦で発生していると考えられています。

これには宇宙でもっとも明るい天体、クエーサーも含まれます

活動銀河核は、相対論的ジェットと呼ばれる原子レベルの粒子がほぼ光速まで加速された噴射を行うことがあります。

ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した映像に基づいた電波銀河PKS 0521-36のジェットのイメージ。/Crediti: Dana Berry (STScI),MEDIA INAF

これも非常に強力なエネルギー放射ですが、大抵は地球からそっぽを向いているため、詳しい成分などは分析できていません。ジェットは未だに謎の多い現象なのです。

しかし、中には極稀に、活動銀河核が地球を向いていて、地球へ向けてジェットを噴射する天体があります。これをブレーザーと呼びます。

活動銀河は宇宙初期の天体で、非常に遠方にあるため、そこから放たれる電磁波の信号は非常に微弱です。しかし、ブレーザーは地球に向けてジェットを放つため、強い信号を捉えることができます

そして今回発見された「PSO J0309 + 27」(略称)は、これまで発見されたブレーザーでもっとも遠方に存在する天体だというのです。

10億歳未満の宇宙

「PSO J0309 + 27」の発見は最初掃天観測されたデータ内に見られたといいます。

その位置を世界最高峰の分解能を持つ米国アリゾナ州にある大双眼望遠鏡(LBT)で観測し、正式な発見に至りました。

それは既知の宇宙では、もっとも遠い部類にある銀河でした。しかも、この銀河は地球に正面を向けたブレーザーだったため、この距離でこれまで観測された中でも、もっとも明るい電波源です。

この果てしなく遠方の天体との距離は、赤方偏移という宇宙の膨張速度と光の波長の伸びから計算されています。赤方偏移の値は6.1(大きいほど遠いことを示す)で、それは実に地球から130億光年という距離でした。

つまりはビッグバンから10億年程度しか経っていない宇宙で放射されたジェットを、私達は観測しているのです。宇宙誕生から10億年以内の強力な持続的電波源というのは、とても貴重な観測対象です。

これは謎の多い初期宇宙の様子を詳しく調べる、またとない機会でしょう。

「PSO J0309 + 27」の活動銀河核は質量が太陽の10億倍程度と推定されていて、この観測からは、ビッグバン発生後10億年の間に、強力な相対論的ジェットを放出する、非常に大規模なブラックホールがすでに多数存在していたことを示しています。

超大質量ブラックホールと降着円盤の想像図。/NASA/JPL-Caltech

この観測結果は、今後、超大質量ブラックホールブラックホールの起源をモデル化しようする場合に、非常に厳しい制約を課すデータになるだろうと、研究者は語っています。

現在のもっとも有力な大質量ブラックホールの形成原理は、恒星サイズのブラックホールが物質を取り込みながら、何十億年という時間をかけてゆっくりと成長していくというものです。

しかし、ブラックホールは思ったほど物質を飲み込まないということもわかっていて、大質量ブラックホールの形成には多くの謎が残っています。

新しい強力な初期宇宙の観測対象が見つかったことは喜ばしいことですが、ここから見つかる事実は現在の大質量ブラックホールが短時間で急成長していることを示すもので、観測内容と無矛盾なモデルを考えることがどんどん難しくなっていくようです。

わかればわかるほど謎が深まるのは、天文学の面白いところであり、困ったところかもしれませんね。

超巨大ブラックホールから「光速の99%の速度」でジェットが発射されていた

reference: media.inaf,Phys / written by KAIN
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