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原因不明。1900年代前半にパンデミックを起こした「感染性の眠り病」とは (4/4)

2021.01.27 Wednesday

2020.03.14 Saturday

視床下部の炎症が原因か?

「感染型眠り病」の原因は100年経った今でも解明されていません。もちろん、治療法も確立されていません。

しかし、この眠り病は、名前の通り「脳に炎症を与える」ものであることは判明しています。

前述したエコノモ氏は、睡眠や覚醒の神経メカニズムが全く不明であった1920年代後半に1つの特徴を見つけていたのです。

流行時、エコノモ氏は死亡した患者の脳を解剖して、特徴的な病変の有無を調べました。

その結果、眠り病患者の脳に、「視床下部の後部」を中心に炎症性病変が広がっていることを発見したのです。また、逆に不眠患者の脳は、「視床下部の前部」に病変が広がっていました。

1枚目の画像
Credit:NATIONAL GEOGRAPHIC-三島和夫

「視床下部」とは、脳の中心部に位置する4グラム程度の小さな脳組織です。食、性、睡眠に関連する行動をつかさどっています。

視床下部の睡眠をつかさどる後部が炎症を引き起こすことにより、覚醒が妨げられ眠気が生じていたのです。当時、エコノモ氏がこの原理を推測し、現代では既に証明されました。また、原因となるウイルスは発見されていませんが、恐らくウイルス性のものだと推定されています。

つまり、エピデミックとなった「感染型眠り病」とは、「脳の一部に炎症を引き起こす感染病」だった可能性が高いのです。

解明への道筋は見えていますが、現在までの間に嗜眠性脳炎の流行が再来しなかったため、原因物質の特定には至っておらず、治療法も未発見のままです。

しかしエコノモ氏が行った嗜眠性脳炎の研究は、まだ睡眠と覚醒に関する神経メカニズムの詳細が不明だった当時に、睡眠に対する科学的知見を与えるものでした。

過去の感染性睡眠病の研究が、まさに睡眠科学の道を切り拓いたのです。

「夢の記憶」が消えてしまうメカニズムが解明される

reference: academic.oup / written by ナゾロジー編集部

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