なんで日中温度が400℃の水星に「氷」があるの?

space 2020/03/17
水星の北極圏。明るい黄色の領域は、レーダーの捉えた水氷の堆積物。/Credit: NASA/Johns Hopkins University Applied Physics Laboratory/Carnegie Institution of Washington
point
  • 水星はもっとも太陽に近い太陽系惑星であり、日中の温度は400℃にも達するが極点には氷がある
  • 水の成分は小惑星によってもたらされ、太陽光線で分解生成されて極点のクレーターの影で凍りついた
  • 水星は大気が無いため、日陰に熱の伝達はなく、このプロセスで300万年間に110億トンの氷ができた

太陽に最も近いため、非常に熱い惑星である水星ですが、探査機の調査により極点には氷が存在することが判明しています。

日中温度が400℃を超えるという過酷な環境の中、どうやって水星では氷が生まれるのでしょう?

新たな研究は熱い水星で水が巡り、極点に氷を作るプロセスについて、説得力のある化学的モデルを提案しています。

この研究は太陽系探査バーチャル研究所(SSERVI)の支援のもとジョージア工科大学の研究者Brant Jones氏を筆頭とした研究チームより発表され、2020年3月16日付けで天文学の科学雑誌『Astrophysical Journal Letters』に掲載されています。

A New In Situ Quasi-continuous Solar-wind Source of Molecular Water on Mercury
https://iopscience.iop.org/article/10.3847/2041-8213/ab6bda

 

水星を巡る水の存在

氷のできたクレーターの概念図。/Credits: UCLA/NASA

水星に氷があるとしたら、まずその水分はどうやってこの星にやってきたのでしょうか?

これまでの有力な説は小惑星が水星に水を運んできたというものです。しかし、では小惑星はどうやって水を得たのかという問題が生まれます。

今回の研究は、もっと別のプロセスを提案しています。

水星は常に強い太陽風の中にあります。水星の磁場は地球の1%程度しかありませんが、この太陽風との影響により、惑星表面には強力な磁気竜巻のようなもので包まれています。

ここでは太陽風で運ばれた陽子(水素陽イオン)が大規模に取り込まれ水星の地表へと取り込まれていきます。

こうして水星の土壌には取り込まれた陽子は、鉱物中にヒドロキシル基(OH)を形成します。これが小惑星の衝突などで巻き上げられたとき、強力な太陽光線の熱によって分解、再結合されて水分子(H2O)と水素(H)を作り出すのです。

こうして生まれた水分子は、太陽風と水星の磁場で生まれる激しい磁気に飛ばされて、水星を巡ることになります。

そして一部は、極点近くのクレーターの中に落ちるのです。そこには永久的な太陽の影ができており、そこで水は氷になって留まることになるのです。

月のようにボコボコの惑星

月のように凸凹のクレーターができた水星表面。/Credit:NASA

水星は太陽系惑星ではもっとも小さく、実際月より多少大きい程度のサイズしかありません。

見た目も月にそっくりで、表面が凸凹していますが、これは水星が大気を持たないため、小惑星の衝突を防ぐことができないからです。

2011年に水星軌道に到達したNASAの探査機メッセンジャーは、水星の極冠クレーターに、氷の存在を裏付けるデータを送信しました。

水星は太陽に近いため日中温度は400℃に及びます。しかし、夜間の温度は逆に-200℃まで低下します。

極端な温度環境では、いくら極点といえど、永久的な水氷が生まれることは難しいようにも感じられますが、この高温環境が水を作り出し、ボコボコのクレーターが極点に永久的に太陽光の届かない日影を作り出しているのです。

水星は大気が存在しないため、日影に入り込んだ場合、そこに熱を伝える手段がありません。そのため、永久的な影には永久氷河が出来上がるのです。

今回のモデルで想定される氷の生成量は、300万年間でおよそ110億トンになるといいます。これは水星の総氷量の10%を簡単に占める可能性があります。

月と水星の違い


水星の3Dモデル。/Source: NASA Visualization Technology Applications and Development (VTAD)

見た目が非常によく似た月と水星ですが、水星には明確に氷の存在が発見されましたが、月ではまだ氷は発見されていません。

なぜ、小惑星が多く衝突し、クレーターも多くできている月に氷がなく、水星には氷ができるのか?

今回の研究はそうした疑問にも答えるものです。

月に氷ができない原因の1つが、水を生成するための化学反応を促す熱が、水星のように十分ではないからです。

しかし、こうした化学的プロセスを理解し、このモデルに基づいてシステムを設計できれば、月で水を生み出し、将来月の宇宙ステーション建設に役立てることができるかもしれません。

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reference: phys,NASA / written by KAIN
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