天王星の新たな秘密を30年越しで発見!ふしぎな磁気の泡「プラズモイド」って?

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1986年1月14日ボイジャー2号が撮影した天王星。青いのは大気中のメタンが赤い波長を吸収するため。/Credits: NASA/JPL-Caltech
point
  • 天王星は磁気軸と自転軸が一致しておらず、自転によって大きくぐらつく特殊な磁気圏を持っている
  • 34年前のボイジャー2号による磁気圏の観測データを再調査したところ、プラズモイドを発見した
  • プラズモイドは磁気による泡で、天王星大気の50%近くがこの泡によって宇宙に失われた可能性がある

天王星は地球から遠く離れた太陽系の惑星で、未だにわからないことが数多く存在します。

天王星に対する人類唯一の接近観測は、34年前に行われたボイジャー2号の観測だけです。

このときボイジャー2号は、天王星の雲頂から81,433キロメートル以内の距離を飛行し、2つの新しいリングの存在と、11の新しい衛星、そして気温がマイナス214℃未満であるというデータを収集しました。

そのため、これらのデータは、現在も貴重な天王星の情報源になっています。

今回の研究者は、34年前にボイジャー2号が天王星のそばをフライバイ観測した際の磁気データを見直しました。

そして、そこから天王星の大気が失われた原因と考えられる新事実を発見したのです。それは複雑な天王星磁気圏の中で生まれた磁場の泡でした。

この研究は、米国ゴダード宇宙飛行センターの研究者2名により発表されており、論文は惑星科学の学術雑誌『Geophysical Research Letters』に掲載されています。

Voyager 2 constraints on plasmoid‐based transport at Uranus

ぐらつく天王星の磁気圏

黄色の矢印は太陽の方向。水色の軸が磁気軸。紺の軸は自転軸を表す。/Credits: NASA/Scientific Visualization Studio/Tom Bridgman

なんじゃこりゃと思うかもしれませんが、天王星は磁気軸と自転軸が一致しておらず、およそ60度の角度でズレています。

地球は自転軸と磁気軸はほぼ一致しているので、磁気圏はきれいな回転をしていますが、天王星はこの軸のズレのために、磁気圏が非常に複雑な動きをしているのです。

このため、天文学者たちは未だに天王星の磁場の状況を正確にはモデル化できていません

今回の研究者たちは、天王星と海王星という巨大氷惑星の研究プロジェクトメンバーですが、この磁気について解決すべき問題を探していました。

天王星の奇妙な磁気が直接測定されたのは、30年前が最後です。

そこで彼らは、その測定値をダウンロードして何か新しいことが見つからないか再調査を行ったのです。

過去の磁気測定では、8分間の測定データの平均値をプロットするという形で測定値が出力されていました。しかしデータはもっと細かく取られているため、彼らは1.92秒というこれまで確認されていなかった、非常に細かい時間分解能でデータを見直したのです。

赤い線が過去に出力された8分間ごとの平均値のプロット。黒い線が今回再調査した1.92秒ごとのプロットを示す。/Credits: NASA/Dan Gershman

赤い線が過去の8分間ごとに平均した値を並べていったグラフ、黒い線は今回行った1.92秒毎の細かな時間分解能のプロットを示します。

こうしてみると、今回のプロットでは、中心辺りに短時間に素早く上下に跳ねるような磁場の変化が見られます

これは一体何を表しているのでしょうか?

研究者はこれがプラズモイドだと考えました

磁気の泡「プラズモイド」

プラズモイド発生プロセスの模式図。/Credit:国立天文台/JAXA

プラズモイドというのは、磁気の泡のことをいいます。

上の図は、太陽に起こるプラズモイドの原理を図にしたものです。

磁力線がよじれて磁気リコネクションという磁力線のつなぎ直しが起きたとき、閉じた磁場が形成され、風船のようにプラズマの塊を包み込み、そのまま宇宙空間へ逃してしまうことがあります。

これは特殊な現象ではなく、木星や土星、金星でも起こっていて、地球でも実は起こっています

磁力は一般的に太陽風によって惑星の大気が吹き飛ばされるのを防いでいますが、このプラズモイドは惑星の大気を宇宙空間へ放出して失わせる原因になっています

ただ、人間のタイムスケールから見ると、この現象で宇宙に漏れる大気は非常に微々たるもので、地球のプラズモイドが宇宙に大気を逃がすのは10億年近くかかる現象です。

しかし、十分な時間が経てば、惑星の運命を変えるほどの影響をもたらします。火星は40億年の間に大気と水分を宇宙空間へ失い乾いた荒野の星になってしまいました。

ボイジャー2号のデータに見られた跳ねるような磁気の変化は、ボイジャー2号がこのプラズモイドの中を通過したためだと、研究者たちは推測を立てました。

実際、このデータ部分を3Dでプロットした場合、それはおよそ204,000キロメートルの長さを持ち400,000キロメートルの幅を持った円筒形の領域になりました。

おそらく、この領域内は他の惑星に見られるプラズモイド同様、イオン化した水素で満たされていると研究者は考えています。

この測定値で示されるプラズモイドは、内部が滑らかな閉じた磁気ループになっていました。これは通常自転する惑星で形成されるものと同様で、遠心力によって大気がプラズモイドに閉じ込められ形成されます。

研究者たちはこれが、木星や土星よりも大きな割合で、天王星の大気を喪失させているだろうと推定しています。

おそらく天王星大気質量の15%から最大で55%がこのプロセスで失われた可能性があります。

これは天王星が大気を宇宙に失った主な要因が、プラズモイドであった可能性を示唆しているのです。

もちろん、30年以上の昔に行われた、たった一回の観測飛行でわかることは多くありません。しかし、古いデータから新しい事実が発見されたことは興味深い事実です。

これこそが惑星科学の魅力的なところだと、研究者たちは語っています。

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