フルダイブ型VRの基礎理論に?人体動作の「基本コード」を解明!

brain 2020/03/31
Credit:The Matrix.Warner Bros. Entertainment Inc.
point
  • 個々のニューロンの神経活動パターンを解析して人体動作の「基本コード」を解明
  • ヘッドギアで基本コードを読み取ることができれば仮想空間で自由に動ける
  • フルダイブ型の仮想世界は終末医療に光をもたらす

一つ一つのニューロンの神経活動を測定する、革新的なブレインマッピングが行われました。

これまでの神経科学では、動作や思考が行われる脳の領域を調べるには、MRIによる脳内の血流量や脳波を測定するのが主流でした。

そのため、個々の脳細胞の働きまで調べることはできず「どのような神経活動パターン(コード)が人間の手首を動かし、足首を伸ばすのか?」といった根本的な疑問には一切答えられませんでした。

ですが今回、アメリカの研究者たちは被験者となった人間の脳に直接、電極を差し込む実験を敢行し、単一細胞レベルの神経活動データの取得に成功

また、得られたデータを分析した結果、様々な体の動きを定義する「基本コード」ともいうべき神経活動パターンたちの存在も発見されています。

研究が進めば、この基本コードをヘッドギアなどを使って安全に検出することで、フルダイブ型の仮想現実世界で自由に動けるようになるかもしれません。

また自動車や船、戦闘機や戦車といった乗り物や二足歩行の人型のロボットを、操縦桿なしに制御することが可能となるでしょう。

研究内容はスタンフォード大学のフランシス・ウィレット氏らによってまとめられ、3月26日に生物科学分野の中で最も権威ある学術雑誌「Cell」に掲載されました。

Hand Knob Area of Premotor Cortex Represents the Whole Body in a Compositional Way
https://www.cell.com/cell/fulltext/S0092-8674(20)30220-8

個々のニューロンレベルの詳細な神経活動を調査する

今回の実験において最も重要だったのは、脳内に電極を差し込む「生きた人間の被験者」の確保です。

電極挿入が可能な被験者の確保は非常に難事ですが、今回、研究チームは四肢を含む全身麻痺を患う2人を被験者として迎え入れることができました。

まず、彼らの脳の「ハンドノブ(中心前回)」(下画像の赤い部分)領域に、96チャンネルを供えた電極が埋め込まれました。

赤色の部分がハンドノブ(中心前回)と呼ばれる脳の区画で、電極が埋め込まれた場所。ベンフィールドの脳地図では手・指・腕を制御している部分とされている/Credit:wikipedia

電極が脳になじむと、研究者は被験者に顔、頭、脚、腕を動かすように指示し(実際には麻痺のため動かないが、それでも動かす努力をするように命令)、それぞれの場所ごとに電極が記録したニューロンの活動電位を測定しました。

様々な身体の動作を定義する「基本コード」の発見

右のドットは埋め込まれた電極がどのように反応しているかを示す。Face(顔)、Head(頭)、Arm/Hand(手首)、Leg/Foot(足首)のパターンの分析から、それぞれの部位の動きを規定する神経パターンの基本コードが発見された/Credit:Cell

測定値を分析した結果、研究チームは、それぞれの四肢の動きに対応する神経活動パターン(基本コード)を発見しました。

このコードは主に2つの要素からなり、一つ目は、動かすべき四肢を決める部位コードで、二つ目は、具体的な動きの情報を含んだ動作コード化要素です。

解読された動作コードには方向性のある運動も含まれており、両方の手足を同時に様々な方向へ動かすような「踊り」もコードの組み合わせで解読できると考えられます。

この成果は、脳とコンピュータを結びつけるインターフェイス(BCI)の性能を格段に向上させ、フルダイブ型の仮想世界における、現実と変らない体の自然な動きを可能にする基礎理論となるかもしれません。

脳インプラントは閉じ込め症候群や終末医療に光をもたらす

Credit:©2014 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス刊/SAOⅡ Project

現在、脳とコンピュータを結びつけるインターフェイス(BCI)に期待される主要な役割の中に、完全な麻痺患者(閉じ込め症候群)や、エイズなどよる衰弱により身体機能を奪われた患者などとの間の、総合的なコミュニケーション方法の確立が含まれています。

第一段階としては、基本コードの読み取りによって、患者に架空のマウスやキーボードを提供できるようにすることです。

第二段階は、つい最近、3月20日に「nature neuroscience」にて発表された研究に代表される、患者の発音動作をコード化することで自然な会話を可能にすることにあります(本研究でも一部実施)。

そして将来的には、視覚や聴覚、嗅覚などの五感のコード化により、フルダイブ型の仮想空間を構築し、終末医療に光をもたらすことが期待できるでしょう。

体が不自由でも、心は仮想空間の中で自由に羽ばたける。そんな日が来るのは、案外遠くないかもしれません。

禁忌の人体実験が可能に?人工臓器を組み合わせた「疑似人体」を開発

reference: neurosciencenews / written by katsu
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