「いつ引っ越したか」もわかる。人間の歯にはすべての生活が記録されていた

biology 2020/03/28
Credit:depositphotos
point
  • 人間の歯には年輪のような生理学的な記録が残っている
  • 出産や病気などの人生における大きな出来事は、歯の年輪に記録されている

歯の役割は噛むだけではありません。

精神状態や体調が口内環境に影響を与えるように、「歯」もその人のストレスを表わします。

米国ニューヨーク大学の歯科人類学者のパオラ・セリート氏らの研究によると、歯には「年輪」のような生活の記録が刻まれていくことが判明しました。

歯の年輪は、人生の中で大きなイベント(強いストレス)に遭遇したときに、その記録を正確に残します。

この研究は3月25日、「Scientific Reports」にて掲載されました。

Parturitions, menopause and other physiological stressors are recorded in dental cementum microstructure
https://www.nature.com/articles/s41598-020-62177-7

歯にも「年輪」ができる

研究者たちは、25歳から69歳の15人の死者らの47歯を分析することにしました。

研究者たちが特に調べたかったのは、歯に保存された「セメント質」です。

Credit:ライオン歯科衛生研究所

セメント質とは、歯の根元を覆っている石灰化した物質のことです。これらは歯根膜によって歯槽骨と結合しています。

そして、このセメント質には、樹木の年輪と同じよう微細な成長線が形成されることが判明しました。

セメント質は生涯にわたって成長し続けるため、セメント質に表れる「異常」は、生涯における「生理的ストレス」を示すマーカーとして役立ちます。

つまり、「年輪の異常(セメント質の成長層が狭くなっている)」を観察することで、哺乳類が経験した生理的ストレスの多い時期を特定できるのです。

歯の年輪は大きなストレスを記録する

35歳の女性の大臼歯。拡大すると、妊娠に対応する暗い「リング」が明らかになる/Credit:Paola Cerrito

研究チームが知りたかったのは、人間にも表れる同様の「年輪異常」が、その人の人生のイベント(出産や更年期障害)と相関しているか、という点でした。

研究の結果、それらの相関性を確かに見つけることができました。

例えば、35歳の女性の歯では、2つの暗いリングが見つかり、それは彼女の2回の出産の時期に対応していたのです。

さらに、年輪のマークは、他の大きなストレスイベント(全身疾患、投獄、農村部から都市部への引っ越し)などとも対応していました。

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これらは、セメント質のストレスに対する「敏感さ」を示唆しています。

セリート氏によると、「歯は、静止しているわけでも、死んでいるわけでもありません」とのこと。

セメント質が証明しているように、歯は、確かに継続的に調整されており、生理学的プロセスに反応しています。

もちろん、今回の結果は、少数の個人でしか実証されていないため、更に大きなグループでの検証が必要となるでしょう。

今後、「歯の生物学的アーカイブ」の発見が、化石にも応用できるかもしれません。

太古からの唯一の情報源である骨や歯から、貴重な動的情報を汲み取ることができるかもしれないのです。

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reference: inverse / written by ナゾロジー編集部
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