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人類はもっと速く走れる。人の走りを補助動力無しで50%高速化させるスプリング装置が開発中

2021.01.27 Wednesday

2020.03.30 Monday

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Credit: Amanda Sutrisno and David J. Braun / Vanderbilt University
point
  • 人の走行を通常より50%高速化させるスプリング装置が開発中
  • トップスプリンターが装着した場合、時速76キロまで理論的にはスピードアップ可能

アメリカ・ヴァンダービルト大学は、25日、人の走行を補助動力なしで50%速くするスプリング装置を開発中であると発表しました。

人の走るスピードは平均して時速24キロ、人類最速のウサイン・ボルトでは時速45キロに達します。

しかし、研究チームによると、このスプリング装置を使用することで、最大時速76キロ(世界レベルのスプリンターが着用した場合を想定)まで理論的には加速可能とのことです。

研究の詳細は、3月25日付けで「Science Advances」に掲載されました。

How to run 50% faster without external energy
https://advances.sciencemag.org/content/6/13/eaay1950

驚異の時速76キロが可能に

この装置は、自転車のペダルメカニズムに基づいています。

自転車のペダルをこぐ際、片方の脚でペダルを踏み出す一方、もう片方は膝を曲げて手前に引きます。この動作は、人の走りにおける滞空脚(地面から離れている方)に当たります。

滞空状態にある脚は、どんなに足の速い人でも前進する力を生み出すことはできません。人の走りにおいて前進するエネルギーが生じるのは、地面を蹴り出す時です。

そのため、滞空している脚は、エネルギーの産出を無駄にしていると言えます。

しかし、自転車のペダルは、滞空中(脚を引く動作)にエネルギーを溜め込み、それを続く「こぐ動作」に応用することで強い前進エネルギーを生み出しているのです。

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Credit: Sutrisno & Braun, Science Advances, 2020

開発中のスプリング装置は、このペダルメカニズムをベースとします。

仕組みとしては、上図のように、滞空中にバネが引かれてエネルギーを蓄え(赤)、地面と接触する一点でそのエネルギーを一挙に解放します(青)。

コンピューターモデルの計算によると、バネが収縮する際に、蹴り出す力の96%を蓄えることができれば、潜在的には秒速20.9メートル(時速76キロほど)を出せるそうです。

ただし、そのためには常人ではなく、世界レベルのトップスプリンターの筋力が必要になります。

以下は、装置をつけた速度と人類最速の速度(ウサイン・ボルト)を競争させたシミュレーションです。

手前を走る縦棒がウサイン・ボルトのスピードに当たります。

スプリング装置のスピードが徐々に上がるのは、装着している人の筋力ポテンシャルを少しずつ高めているためです。

最初の方の常人レベルだとボルトのスピードには敵いませんが、スプリンターレベルで仮定すると圧倒的に速いのが分かります。

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Credit: Sutrisno & Braun, Science Advances, 2020

研究主任のデビッド・ブラウン氏は「時速76キロを出すにはスプリンターでなければ不可能ですが、常人が装着しても通常の倍近くまではスピードアップできるでしょう」と話します。

装置の実現までには解決すべき点がいくつか残っているそうですが、来年までには試作品の実証テストを実施するとのことです。

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reference: sciencealert / written by くらのすけ

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