- 白色矮星「WD 1145+017」をもとに、新しい天文学「死の惑星学」が構築された
- 死の惑星学に基づくシミュレーションによって、白色矮星周辺の惑星がたどるプロセスが明らかになった
人間や生物にいずれ死が訪れるように、宇宙の天体にも同様の死があります。
生物の死は極めて静的で周囲に影響を及ぼすことがありませんが、天体の死は周囲に大きな影響を与えます。
死んだ恒星(死の過程にある恒星)には重力や熱が残っているので、その影響により周囲の天体に自身の周りを周回させたり、破壊したりします。
2015年、天文学者たちは死んだ恒星「WD 1145+017」を発見しました。
「WD 1145+017」は天文学者たちの研究対象となっており、「天体の死と周囲への影響」を学ぶための新しい分野「死の惑星学(ネクロプラネトロジー:necroplanetology)」を構築しました。
そして、英国ウォーリック大学の天文学者であるディミトリ・ベラス氏ら研究グループによって「WD 1145+017」が死ぬ過程におけるシミュレーションが発表されました。
研究の詳細は、「The Astrophysical Journal」に受理され、「arXiv 」で公開されています。
Necroplanetology: Simulating the Tidal Disruption of Differentiated Planetary Material Orbiting WD 1145+017
https://arxiv.org/abs/2003.08410
WD 1145+017の発見
「WD 1145+017」は2015年に発見された白色矮星です。
白色矮星とは、太陽のような恒星が死の過程で到達する形態の1つです。
白色矮星になると地球と同じ大きさにまで縮小するのですが、太陽の半分ほどの質量を保っています。そのため、「白色惑星のスプーンひとさじの重さは車1台に相当する」とも言われています。
また、恒星は死んだ後も熱を保持しており、表面積が小さい分、生きているときよりも高い表面温度になります。
発見された白色矮星「WD 1145+017」は、独特の減光パターンを持っており、4.5時間~5時間おきに明るくなったり暗くなったりしていました。
さらに、「WD 1145+017」はその重力によって、自身の周りを周回する惑星を粉砕し、欠片を取り込んでいました。この様子から「ゾンビ星」とも言われています。