なんで?筒に入れた粒子が「粒子の総重量」より重くなる現象を発見

physics 2020/04/01
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point
  • サイロのような円筒に粒子を詰め込んだ場合、実際よりも重くなる場合があると確認された
  • 実際より軽くなるヤンセン効果は古くから明らかにされていたが、重くなることが示されたのは初
  • どちらも粒子と壁との摩擦が原因で、サイロの直径や詰め込んだ粒子の高さで状況が変わる

サイロのような円筒形の容器の中に、粒子状のものを大量に流し込んだだけなのに、実際よりも重くなることがあるという研究が発表されました。

おいおい、物理法則破れてんじゃん! ヒッグスじゃ! ヒッグス粒子の仕業じゃ!

と、騒ぎたくなるかもしれませんが、そんな複雑なお話ではありません。

容器に詰め込んだ物質は、互いに押し合って容器の壁と摩擦を起こし、押し上げられたり、押し下げられたりするために、実際の質量と異なる場合があるのです。

ただ、穀物でいっぱいのサイロでは、壁が穀物の重量の一部を支えているため、測定された重量が穀物の真の重量よりも少なくなるというのが一般的です。

では、一体どうしたら実際より重い状態が生まれるのでしょう?

この研究は、シンガポールの南洋理工大学のShivam Mahajan氏とジョージア工科大学のMichael Tennenbaum氏を含む国際研究チームより発表され、論文は米国物理学会の査読付き科学雑誌『PHYSICAL REVIEW LETTERS』に2020年3月27日付けで掲載されています。

Reverse Janssen Effect in Narrow Granular Columns
https://journals.aps.org/prl/abstract/10.1103/PhysRevLett.124.128002

サイロの物理学

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サイロと言われてもすぐにピンとこない人もいるかも知れません。農場などに建っている穀物などを入れておく円筒形の貯蔵庫のことです。

今回の研究では、こうした円筒型の容器の中に穀物をいっぱい詰め込んでいった場合、重さはどうなるか? という数値シミュレーションが中心になっています。

もともとこの問題については、1895年にドイツの技術者H.A.ヤンセンが論文を発表していて、穀物などの粒子は、粒子間の摩擦や壁との摩擦によって部分的に浮遊状態になるため、見かけ上の重量が実際より軽くなるということを数学的に示しています

1923年、ある物理学者チームが、サイロの模型を使ってこのヤンセンの予想を検証し、実際にはサイロへ粒子を充填する方法によっては、粒子が押し上げられて軽くなるだけではなく、壁との摩擦に押し下げられて重くなる場合があり得るという提案をしました。

しかし、この実験はうまく再現性が取れず、そのような下向きに働く逆ヤンセン効果は、これまで明らかにされていませんでした

実際より重くなることはあるのか?

今回の研究者たちは直径6mmのプラスチック製ビーズと、直径の異なるガラス製シリンダーを使って、逆ヤンセン効果の検証を行いました。

彼らは粒子を添加するたびに、見かけの重量とシリンダーにできたビーズの柱の高さを測定していきました。

画像はイメージです。実際の実験とは関係ありません。/Credit:depositphotos

ビーズ1つの直径の30倍の直径を持つシリンダーに、ビーズを流し込んでいった場合、円柱の高さが増加するにつれて見かけの重量は、ヤンセンのモデルが予想する通り、真の重量に比べて緩やかな増加を示しました。

しかし、これがシリンダーの直径をビーズの8~12倍に設定して実験した場合、なんと重量は実際の重量よりも最大で10%増加したのです。これは、柱の高さが増加していくにつれて収まっていき、最終的には真の重量を下回りました

これは現行の理論を覆す、驚くべき結果でした。

見かけ上、増える重量

実験の数値シミュレーション。赤は重力に対抗して粒子を支える力。青は粒子を押し下げる力を表す。/Credit:M. P. Ciamarra/Nanyang Technological Univ.

上の画像は、今回の実験の数値シミュレーションです。

粒子を1つ加えると、他の粒子は壁に押し出されるよう圧力を受けます。この壁と接する端の粒子の摩擦が、押し下げるように下向きに働くか、宙に浮くように上向きに働くかで、見かけ上の重量は変化することになります。

画像の赤い粒子は上に働く力を受けていることを示し、青い粒子は下に働く力を受けていることを表しています。

このシミュレーションからもわかりますが、粒子の作る柱が高くなると赤い粒子が増えますが、さほど高くない状態では青い粒子の方が多くなっています。

今回の研究チームは、実際に入れた物質より重くなるという逆ヤンセン効果が働く条件には、柱の高さや、またシリンダーの直径が関係しているということを発見したのです。

今回の結果から、チーム出した結論は、シリンダーの直径がビーズの10~36倍の場合、充填されたビーズが特定の高さにある間だけ、粒子の総重量は実際の重量より大きくなるというものです。

しかし、充填が進み粒子の柱が高くなると、壁との摩擦で下に押し下げられる粒子は埋もれてしまい、余計な荷重をかける効果が失われるため、摩擦で宙に浮いた粒子の効果が支配的になり、重量は軽くなっていくのです。

また、シリンダーの直径がビーズの30倍を超えた場合、直径が広がるにつれて、壁と接する表面積より体積の方がずっと大きくなっていくため、粒子同士の摩擦で上に押し上げられて宙に浮く状態のほうが支配的になり、やはり総重量は実際より軽くなります。

実際より重くなるという現象は、非常に限定的な状況でのみ発生するものだったのです。

「これは全く予想外の効果でした。これは粒子状の物質を圧縮する物理学を理解する重要な知見です」と研究者たちは語っています。

この研究結果は、ヤンセン効果と逆ヤンセン効果を切替可能かどうかなど、新たな疑問を提示してい、新たらしいタイプの振動センサーなどの開発に繋がる可能性もあるとのこと。

重さなんて一定だろうと思っていたら、こんな不思議な効果が隠れているなんて、量子力学を含まなくても物理学は不思議で奥が深いですね。

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reference: physics/ written by KAIN
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