真っ赤な野菜「ビーツ」から青色染料を作り出すことに成功

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Credit: E.L. BASTOS
point
  • 「ビーツ」として知られている赤色の野菜から、青色染料を作り出すことに成功
  • ビーツの赤色の元になっている有機物の化学構造を改変することにより、青色へと変化させた

安全性の観点から、食品や化粧品に使用する天然着色料の需要は非常に高いと言えます。

しかし、天然の青色染料を抽出するのは、他の色に比べて難しいようです。

そのため、ブラジルのサンパウロ大学化学研究所基礎化学科のエリック・レイテ・バストス氏ら研究チームは、赤色のビーツ(ビートルート)から青色染料を作り出すことにしました。

赤色の元になっている有機物を化学的に調整して、青の色素の合成に成功したのです。

研究の詳細は4月3日、「Science Advances」誌に掲載されました。

A metal-free blue chromophore derived from plant pigments
https://advances.sciencemag.org/content/6/14/eaaz0421

青色の天然着色料は取得困難

Credit:depositphotos

需要に反して、青色の天然着色料を抽出するのは難しいようです。

例えば、自然界には蝶やトンボ、一部の鳥など、美しい青色を有する生物が存在します。しかし、それらの青色は構造色によるものです。

実際に青色なのではなく、細かい表面構造による光の反射によって青色に見えているだけです。

ですから、青色色素を抽出することはできません。

また、青色のフルーツとして有名なブルーベリーも、染料には向いていません。

なぜなら、ブルーベリーの天然色素は長持ちせず、色が変化したり色あせたりする可能性があるからです。

そこで、バストス氏らの研究グループは、赤いビーツに着目しました。

ビーツに含まれる赤の色素を化学的に改変して、青の色素を抽出しようとしたのです。

赤色のビーツから青の色素を合成する

原子同士が結合した状態を「分子」と言いますが、結合の仕方にはいくつか種類があります。

例えば、水素分子H₂のような1組の電子を共有している単結合(Single bond)、酸素分子O₂のような2組の電子を共有している二重結合(Double bond)などです。

Credit:chem

そして、研究者たちは、ある化学構造に単結合と二重結合を交互に加えることで、特定の分子の色を調整できます。

交互結合の一例。β-カロテンの化学構造/Credit:Wikipedia

さらに、バストス氏によると、この化学構造の改変により「黄色とオレンジの光を吸収して、青く見える分子を作ることができます」とのこと。

ビーツの色素はすでに、その「交互の結合」をいくつか持っていますが、青色に見えるほど十分には持っていません。

そのため、研究者たちは、「交互の結合」を増やすことにしました

ビーツ色素の分子構造の一部を切断し、それ自体が「交互の結合」を持つ2,4-ジメチルピロールと呼ばれる化合物に置き換えたのです。

Credit:E.L. BASTOS

結果、青の色素を合成することに成功しました。

新しい青色の染料は「ビートブルー」と呼ばれます。

ビートブルーは、ブルーベリーのように色がうすくなったり、変化したりしません。

着色テストでは、髪の毛、カイコの繭、綿、セルロース、ヨーグルトなどへの着色がなされましたが、いずれも良好な結果でした。

Credit:E.L. BASTOS

また、一部の青色染料には有毒な金属が含まれており危険ですが、ビートブルーは魚の胚や人間の細胞培養には、すでに無毒であるとの結果が出ています。

現段階では、ビートブルーを食べることができるか分かりません。食品安全を実証するためには多くの追加テストが必要だからです。

今回の研究で化学構造の改変による色素変化が可能になったので、今後は「より安全な染料作成」の研究が進められていくでしょう。

使用された2,4-ジメチルピロールは自然由来のものではありませんが、バストス氏は、将来的には、天然化合物を用いて青色合成を実現できると考えています。

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reference: sciencenews / written by ナゾロジー編集部
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