「狩られる側のウイルス」海中のウイルスを捕食しまくる生命の存在が明らかに

science_technology 2020/04/11
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point
  • 海中にもウイルスが存在する
  • 海の生き物の中にはウイルスを捕食できるものがいる
  • 海綿とカニは優れたウイルスバスターだった

新型コロナウイルスのように、ウイルスは生物に次々に感染し数を増やしていきます。

といっても生命活動を行っているわけではなく、大半の種の遺伝情報には、ただ「増殖命令」が記されているだけです。

ウイルスは空気中だけでなく海中にも存在し、その数は「1ミリリットルあたり1億個」だとも言われています。

しかし、ウイルスが海の生物を狩りつくすことはありません。

何かが作用して、ウイルスの破局的繁殖が防がれていたのは確かですが、その正体は不明でした。

ですが今回、オランダの海洋研究者によって「ウイルスを狩る生命」の存在が明らかになりました。

いったいどんな生き物たちが、海のウイルスを駆逐していたのでしょうか?

研究内容はオランダ国立海洋研究所のジェニファーE.ウェールズ氏らによってまとめられ、3月23日に学術雑誌「Nature / Scientific Reports」に掲載されました。

Marine virus predation by non-host organisms
https://www.nature.com/articles/s41598-020-61691-y

ヒーローを探せ

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これまでのウイルスにかかわる研究は「狩る側のウイルス」と「狩られる側の宿主」の関係を解き明かすことを目的としていました。

しかし海の生物がウイルスに狩りつくされない理由は、何かが、あるいは誰かが、ウイルスを殺しているからです。

そこでウェールズ氏らは人間にとって無害な、植物プランクトンに感染するウイルスを、様々な海の生き物に食べさる実験を開始しました。

もしかしたら海の中には「ヒーロー」なような生物がいて、ウイルスを駆逐しているかもしれないからです。

ウイルスを狩るモノたち

実験に使われた海綿(Halichondria panicea)/Credit:habitas

実験の結果、意外な生き物が海のウイルスを捕食していることが明らかになりました。

最もウイルスの捕食能力が高かった生き物は、「海綿動物」と言われる、原始的な動物でした。

海綿動物は細かい網目状の繊維からなり、大きなものはスポンジとして使われています。

また体は口の空いたチューブ状の構造をしており、口と肛門の区別がありません。

これらのチューブの内部には微生物を捕らえる仕組みがあり、ウイルスもここで捕食されると考えられます。

海綿はウイルスに対して絶大な駆逐能力があり、たった3時間で98%のウイルスを捕食してしまいました。

次いでウイルスを駆逐する効果が高かったのはカニ(90%駆除)、そしてザルガイ(43%駆除)、カキ(13%駆除)などが続きました。

またこれらの動物には及ばないものの、イソギンチャク、フジツボ、ムール貝、ホヤなどにもウイルスを駆除する能力が確認されました。

ヒーローを乱獲するな

スポンジにされた海綿/Credit:depositphotos

感染と増殖、変異と適応を繰り返すウイルスは無敵の存在のように思われがちでしたが、海中では宿主以外の生物にとって「逃げないエサ」に過ぎない…という意外な実態が浮き彫りになりました。

海の生き物がウイルスに狩りつくされないのは、ウイルスもまた狩られていたからです。

しかし、この狩る狩られるのバランスが壊れた場合、例えば最強のウイルスバスターである海綿が激減した場合、海の中でパンデミックが起こり、大規模な生態系の破壊が起こるかもしれません。

天然由来の製品にこだわりがあっても、海綿をスポンジ代わりに乱獲するのはやめておいたほうがよさそうです。

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reference: sciencealert / written by katsu

 

 

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