- 新型コロナウイルスを殺すには沸点に近い温度が必要かもしれない
- 生物学的に汚染された環境では、ウイルスは想定外の温度に耐える可能性がある
- ウイルスは人間の油断や隙といった非物質的な要因も温床にする
現在、多くの研究者が実験室内で新型コロナウイルスを調べています。
これまでは、実験後に不要となった新型コロナウイルスを破棄する場合、60℃で30分間の加熱を行い、ウイルスを不活性化して(殺して)きました。
この手順はエボラ出血熱ウイルスなど、病原ウイルスに対する一般的な手法として世界で広く取り入れられています。
しかし今回、フランスの研究者によって新型コロナウイルスの詳細な不活性化実験が行われたところ、条件によっては既存の方法(60℃で1時間)ではウイルスが生存したままであり、完全に死滅させる為には沸点に近い温度が必要であることが示唆されました。
今回の実験結果が事実であるならば、中途半端な温度で消毒したマスクを再利用することは、極めて危険な行為となります。
しかし、ウイルスはどうやって高温を生き延びるのでしょうか?
研究内容はエクスマルセイユ大学のボリス・パストリノ氏らによってまとめられ、4月11日にプレプリントサーバーである「bioRxiv」に掲載されました。
https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2020.04.11.036855v1.full.pdf
新型コロナウイルスをサルの腎臓に感染させて増やした
多くのウイルスは、60℃で1時間加熱処理することで不活性化できます。
これは、生物の体を構成するタンパク質のほとんどが60℃付近で変性し、生物学的な機能を失うからです。
そのため、新型コロナウイルスの破棄にも、これまでは60℃で1時間の処理が行われてきました。
しかし、ノロウイルスなど一部のウイルスやボツリヌス菌は、不活性化に100℃近い温度が必要であることが知られています。
そこで研究チームは、慣例によって何気なく定められていたウイルス取り扱い法が、新型コロナウイルスにきちんと効くかどうかを確かめることにしました。
実験にあたって研究チームはまず、新型コロナウイルスをアフリカミドリザルの腎臓細胞に感染・増殖させました。
新型コロナウイルスは犬や猫にも感染することが知られており、同じ霊長類のサルならば容易だと判断したからです。
結果は予想通り、アフリカミドリザルの腎臓で感染・増殖を開始しました。