- 万能細胞を経由しないで、皮膚細胞を直接、視覚細胞に変化させた
- 変化した視覚細胞を盲目のマウスに移植すると、マウスは視覚を取り戻した
- 細胞のダイレクト・リプログラム技術が発展すれば「変身」も可能になる?
新しく行われた研究で、皮膚細胞を万能細胞に戻すことなく直接、視覚細胞(桿体細胞)に変えることに成功しました。
またこの視覚細胞を生まれつき盲目であったマウスの網膜に移植すると、マウスは光を認識するようになったとのこと。
これまでは、同じような細胞のリプログラムを行うには元の細胞を一度、万能細胞(iPS細胞)に変化させてから、視覚細胞へと再変化させる必要があり、最大で6カ月もかかっていました。
しかし今回の研究によりダイレクト・リプログラムが可能になったことで、必要とする時間を10日まで一気に短縮できました。
今後、リプログラム技術の研究速度は十数倍以上、加速されると考えられます。
さらに、ダイレクト・リプログラム技術が発展すれば、SFやマンガの世界で行われている「変身」が、現実の技術になる可能性もあるのです。
しかし「皮膚」から「目」へ、細胞はどのようにしてリプログラムされたのでしょうか?
ダイレクトリプログラムに使われた5つの小分子と3つの添加物には、身近なアレも入っていた
日本の山中教授は4つの因子を制御させることで体の細胞を万能細胞へと変えましたが、今回の研究では主に5つの小分子の「カクテル」と3つの添加物を加えることで、皮膚から視覚への細胞のリプログラムに成功しました。
これらの成分の中には、思いもよらない身近な化学物質も含まれていました。
上の図は何日目にどの分子を加えるかを示した「レシピ」になります。
レシピによれば、この5つの小分子は、バルプロ酸(V)・CHIR99021(C)・RepSox(R)、フォルスコリン(F)、IWR1(I) となります。
この中にあるフォルスコリンはダイエットサプリとして売り出されている「フォースコリー」と同じ成分です。
なかには、ダイエット目当てで飲んだ人もいるかと思います。
また追加で加えられた3つの添加物の中には、疲労回復効果があるタウリン(S)やビタミンA誘導体であるレチノイン酸(R)といった栄養ドリンクや栄養サプリにもよく入っている成分がありました。
それ以外の物質は身近とは言えませんが、決して珍しい成分ではありません。
しかし、私たちの胃袋に目ができていないのは、これらの物質を適切な配合で使う必要があったからです。
研究者たちは、この適切な配合を決定するために、研究時間の多くを費やしました。