500年前に失われた青色「フォリウム」を再現したら未知の新物質を発見

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credit: science advance
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  • 失われた青色「フォリウム」の製造方法が再現された
  • 「フォリウム」のなかには未知の新物質「クロゾフォリジン」が含まれていた

現在、身の回りにある染料のほとんどが、化学合成によって作れた「合成染料」です。逆に、花や草などの自然の色素を使った「天然染料」は、芸術の世界を除けば、ほぼ使われず、製法すら分からないものもあります。

例えば、中世の写本の装飾には「フォリウム」という、青色の天然染料が使われていましたが、活版印刷の普及によって出番が無くなってしまいました。

しかし今回、リスボン大学の保存学者マリア メロ氏が失われた青色染料「フォリウム」を再現に成功しました。

保存学者であるメロ氏らは、活版印刷以前の書物を修復、保存するために「フォリウム」を復活させる必要があったのです。

では、「失われた色」は一体どのように復活させたのでしょうか?

絶滅した言語で書かれた書物に製法のヒントが…

メロ氏らは最初にフォリウムの原料を書物から見つけ出しました。

しかしフォリウムの製法が書かれていた書物は、過去にユダヤ人が使用していた絶滅言語Judeao-Portugeuse(ユダオ-ポルトガル語)で書かれていたため、翻訳に手間取りました。さらに、原料である植物が「毛もくじゃら」な見た目をしていることや、染料の製法についての記載はあったのですが、ユダヤ人の言語では、的確な植物の名前がわかりませんでした。

そこでメロ氏らは実際にフィールドワークに出て、書物に書かれた「毛もくじゃら」な植物の実を探しました。

3ヶ月にわたってフィールドワークをした結果、ポルトガル南部の町モンサラスで「Chrozophora tinctoria(通称ダイクロトン)」という植物を見つけました。この実を潰すと「フォリウム」の青色の染液が得られたのです。

Chrozophora tinctoria(ダイクロトン)の実 / credit: By Solanum – Own work, CC BY-SA 3.0(wikipedia)
モンサンスの町 / By Rafael Tello – Own work, CC BY-SA 4.0(wikipedia)

青色染料「フォリウム」の中には未知の分子が含まれていた

青色の天然染料といえば、青い花や果物に見られる「アントシアニン」やジーンズを染めるために使われる「インディゴ」があります。

どちらの染料も、染液の分子構造が解明され、医薬品としての価値や、化学合成することができないか研究されてきました。

よって、メロ氏らも「フォリウム」の染液にはどんな分子構造を持った物質が含まれているのか、NMR(核磁気共鳴装置)などの構造分析機器や、Gaussianなどの計算化学ソフトウェアを使って調査しました。

その結果「クロゾフォリジン」という新しい分子が、フォリウム中に含まれていることが分かりました。

クロゾフォリジンの構造 / credit: science advance

失われた青色「フォリウム」を再現するために始まった研究が、結果として未知の新物質「クロゾフォリジン」を発見しました。

「クロゾフォリジン」は中世の書物を保存するだけでなく、医薬品への利用など、多くの役割を持っているかもしれません。

この研究は4月17日付けで「Science Advance」に掲載されました。

色を塗らずに「構造色だけ」で絵画を再現することに成功!未知の色が見られるかも?

reference: Atlas Obscura / written by shuni
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