音は風で「曲がる」? 風に向かって叫ぶときの物理学

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風に向かって大声で叫ぶ…なんてシーンを映画やドラマで見かけますが、空気の振動である音は、風の中ではどんな影響を受けるのでしょうか?

現実でも強風の中では声が届きにくかったり、聞こえにくかったりします。もちろん音の聞こえやすさは温度や環境による影響が大きいですが、風と音の関係についてはあまり知られていないかもしれません。

「愛してる!」と叫んでも、相手に「え? なんだって?」と言われないために、風が音波に与える物理的な影響について見ていきましょう。

そもそも音とは?

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音は簡単に言えば、物体の振動によって生じる圧力波です。

太鼓を叩いたり、ギターを引いたり、声帯が震えたり、音は物質の振動によって発生します。

光(電磁波)は媒体を必要としませんが、音には媒体が必要です。

音は空気中の粒子が伝達する方向へ衝突することで進んでいきます。なので気体以外の液体でも個体でも伝わりますが、何もない真空だと伝わりません。

このため、媒体となる空気の状態はすべて音の伝搬に影響を与えます。温度や湿度も、音の伝わり方には影響するのです。

音と風の関係は、水の流れと水泳選手に似た関係を持っています。

当然、水泳選手は水の流れに逆らうより、流れに乗ったほうが速く泳げるでしょう。同様に、音も風と同じ方向に進む場合速く伝播しますが、逆らった場合には、その勢いが減算されます。

大気中を進む音の速度は343m/sです。ここで、例えば風速13.4m/sだった場合、風下に向かう音は356.4m/sで進むことになりますが、風上に向かう音は329.6m/sに減速されることになるのです。

つまり風は、そのまま音速に影響を与えます。

ただ、風が音に対して起こす影響は単純な速さの増減だけではありません。

音の屈折

屈折という現象は、波がある媒体から別の媒体へ移動するとき、波の速度や波長が変化することによって進行方向の角度が曲がることです。

光は水の中に入ると曲がりますが、これは空気中と水中では進む速度が変わるためです。密度の高い場所では、光は分子中の電子と相互作用して速度が落ちてしまうのです。

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音の屈折は、あまり聞いたことの現象ですが、風の影響で速度が変わるとき音波もこの屈折を起こします

風について考えてみましょう。

一般的に地表付近では樹木や建物、また地形の起伏など阻害する要因が多いため、低高度では風の速度が遅くなり、逆に高高度では風速は早くなっていきます。

風と同じ方向に向かって進行する音は、このとき地表に向かって屈折を起こすことになるのです。

上空が速く地表が遅い風の中では、音も地表に向かって屈折する。/Credit:scienceabc

音波の上半分より下半分の方が遅くなると、アコーディオンの蛇腹のように、上半分の波は距離が開いて、下半分の波は縮んでいる状態になります。すると波は縮んだほうへ曲がっていってしまいます。

こうした理由で、音波も上空から地表へ曲がっていくわけです。

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一方、音が風に逆らって進んでいた場合、音速は先ほどと逆の関係で減速していきます。

つまり風速の速い上空ほど音は遅く進み、風速の遅い地上付近では音は速く進むのです。

すると、先程とは逆に、風に逆らって進む音は地表を離れて上空に向かって屈折してしまうのです。

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このように風速の違いによって音に屈折が生じるため、風下の音源は音が聞き取りにくくなり、風上からのほうが聞き取りやすくなるのです。

その他の要因

最初に触れたように、音は他にも温度や湿度の影響でも屈折を起こします。

空気の温度差は水場の近く(湖や池)でよく見られる現象であり、釣りを趣味にしている人は経験している場合があるかもしれません。

水は空気分子を冷却し、水面から離れた空気に比べて水面付近の温度を低くします。こうした温度差は、太陽の熱の影響が少ない早朝に顕著に現れます。

温かいほうが分子の運動エネルギーは大きいので、音も温かい空気では速く移動し、冷たいと遅くなります。

このため、音波は地表(水面)に向かって屈折し、あまり長い距離は移動できなくなります。温度差はこのように音の到達距離に影響を与えるのです。

告白するときや助けを呼ぶときは、風下に向かってするといいかもしれませんね。

もし宇宙で音が伝わったら「太陽の音」はどう聞こえるの?

reference: scienceabc/ written by KAIN
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