土に含まれるケイ酸塩が止血を促進すると判明

chemistry 2020/05/02
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  • 土に含まれるケイ酸塩が止血を促進すると判明
  • ケイ酸塩は、血液凝固因子Ⅻを活性化させ、素早く傷を塞ぐ
  • 土による血液凝固反応は、陸生哺乳類特有のものだった

ブリティッシュコロンビア大学、生化学・分子生物学部門の准教授であるクリスチャン・カストラップ氏ら研究チームは、土が傷に効果的であることを初めて発表しました。

地球の地殻上で最も豊富な物質である、土壌のケイ酸塩が、血液凝固を促進させると判明したのです。

カストラップ氏は、「土壌は単に食べ物を育てたり、建築素材を作ったりするためのものではありません」と話しています。

傷口に土が触れると破傷風にかかる危険性があるというのは広く知られているため、少し意外な組み合わせです。いったいどのように止血を促進するのでしょうか?

土壌のケイ酸塩が止血を促進

出血した際、止血の働きをするタンパク質を「血液凝固因子」と言います。

血液凝固因子にはいくつかの種類がありますが、細胞が傷害を受けた際に主に活躍するのは、凝固因子Ⅻです。

Credit:日本血液製剤協会

そして、新しい研究によると、傷口を土で覆うことで、この凝固因子Ⅻが活性化されることが明らかになったのです。

この活性化の原因は、土壌に含まれるケイ酸塩です。

ケイ酸塩が凝固因子Ⅻを活性化させることで、タンパク質は急速な連鎖反応を開始し、傷口を塞ぎ出血を止めるのです。

さらに、今回明らかになった「ケイ酸塩と凝固因子Ⅻの活性反応」は、陸生哺乳類、つまり、陸上に生息する哺乳類に特有のものだということも明らかになりました。

土と接することの多い陸生哺乳類だけが、土壌のケイ酸塩と反応して自身の傷を治すことができるようになっているのです。

この研究論文の第一著者であり、ブリティッシュコロンビア大学の生化学・分子生物学部門の博士課程のリー・ジン・ジュアン氏によると、「これらの結果は、私たちと環境の関係性に対する見方に大きな影響を与えるでしょう」とのこと。

傷口に土を塗るのはアリ?

当然ながら、通常の土には多くの細菌が含まれているため、感染症のリスクがあります。

ですから、実験では、滅菌された土が使用されました。

「凝固因子Ⅻの活性化反応」についても、「滅菌土」もしくは、「ケイ酸塩」に注意が向けられており、実際の土を傷口に塗ることを推奨しているわけではありません。

現在、外傷患者の死亡原因の40%は多量出血によるものです。

特に、医療機器や傷口を塞ぐための製品を利用できない遠隔地であれば、止血の方法が限られてきます。

滅菌土を止血に活用できるなら、応急処置としての幅が広がるかもしれません。

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もちろん現段階では、医療品を所持しているよりも滅菌土を所持している方が稀であるため、すぐに活用できるものではありません。

しかし、研究を続ける価値は大いにあるでしょう。土による感染症を抑えたり、滅菌土作成方法が明確になったりすれば、現実的な応急治療として確立できるかもしれません。

研究チームは今後、ケイ酸塩に対する血液の反応が、土壌中の細菌からの感染症を防ぐことに役立つかを調べるようです。また、医療品の限られた月面で、ケイ酸塩が止血に役立つかどうかテストする予定です。

研究の詳細は4月27日、「Blood Advances」に掲載されました。

Coagulation factor XII contributes to hemostasis when activated by soil in wounds
https://ashpublications.org/bloodadvances/article/4/8/1737/454477/Coagulation-factor-XII-contributes-to-hemostasis

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reference: ubc / written by ナゾロジー編集部
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