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人の「やり抜く力」を脳構造から80%の精度で判別可能に

2021.01.27 Wednesday

2020.05.01 Friday

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やり抜く力を持っているかどうかが脳構造から判別される/Credit:depositphotos
point
  • 人間の脳構造を調べるだけで「やり抜く力」があるかどうか判定できる
  • 「やり抜く力」がある脳構造に変化することも可能である

宿題から言語学習まで「やり抜く力(達成する力)」は非常に重要ですが、知能検査とは違い、「達成する力」を正確に測定することは困難でした。

しかし今回の研究では、これまで正確な測定ができなかった「達成する力」の科学的定量化に成功。人工知能が人間の脳を分析した結果、人間では認識不可能だった「達成する力」の強さにかかわる前頭葉の構造を発見したのです。

研究者たちは研究用に開発された「持続性測定器」を使って脳をスキャンすることで、対象とする人間が「達成する力」があるかどうかを80~90%の精度で判別可能になりました。

この数値は標準的な面接評定の信頼性を大きく上回ります。

急速な発展をみせる能力定量化技術が、既存の適性テストや面接を介した判別システムに取って代わる日がくるのでしょうか?

達成する人間は脳構造が違っていた

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達成者グループと非達成者グループには明らかに脳構造の違いがあった/Credit:nature COMMUNICATIONS BIOLOGY

人間の「達成する力」を測定するために、まず被験者の全員の脳構造をMRIを用いて詳細に記録しました。

次いで、被験者に「ハノイの塔」と呼ばれる複雑なパズルを1時間に渡り解かせた結果、参加者のうち52%は達成し、48%は途中で諦めました。

諦めた理由の中で最も多かったものが「予想より難しい」であり次点で「疲れた」でした。

次に研究者たちは、達成者と非達成者の間で脳構造に違いがないかを、機械学習を用いて調査。

結果、達成者の左脳の前頭前部の灰白質容量と、白質の神経線維の方向性の強さが、非達成者にくらべて優位に大きいことがわかりました。

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達成者グループは左脳の前頭前部に密度が高い神経接続域をもっていた/Credit:nature COMMUNICATIONS BIOLOGY

また上の図に示す部分において、達成者は非達成者に比べて神経接続が多く観察されました。

得られた結果をもとに再度、参加者の脳構造から達成の可否を推測してみると、精度は90%にも及びました。

さらに被験者に対する課題をパズルからより長い持久力を求められる第二外国語の学習(5週間に及ぶ)に変更した場合、脳構造は、80%の精度で達成者と非達成者を事前判別できることがわかりました。

このことから研究成果を応用し、評価項目に脳構造の優劣を加えることで、面接官の人間的なミスや勘違いを補正できると考えられます。

次ページ努力は非達成者側から達成者側へ脳構造を変化させる

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