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- 新規の抗体は新型コロナウイルスを完全に無力化してヒト細胞への感染を防ぐ
- 効き目がでる仕組みを解明すれば新概念の抗体薬となる
日本では新型コロナウイルス感染の第一波とされた東アジア型が終息する一方で、第二波のヨーロッパ型の感染が広まっているとされ、終わりが見えない状況にあります。
しかし今回、オランダの研究者が、ウイルスが細胞に感染するのを完全に防ぐ抗体の作成に成功しました。
この新たに作成されたヒト型のモノクローナル抗体は、新型コロナウイルスのスパイク部分に結合することで、ウイルスから感染能力を奪い無毒化(中和)することができます。
また、今回作成された抗体は新型コロナウイルスだけでなく、かつて流行した同じコロナ系のウイルスであるSARSウイルスの無毒化(中和)にも成功したとのこと。
新しく作られた抗体には、コロナ系のウイルスに対する汎用的な無毒化能力が存在し、変異種に対しても高い効果が期待できると考えられます。
以下、新型抗体薬の仕組みを見ていきましょう。
ウイルスと抗体を混ぜてヒト培養細胞に注ぐ

抗体の作成には人間の免疫遺伝子を書き込まれたマウスが使われました。人間の免疫遺伝子を組み込まれたマウスは、ヒト型の抗体も生産するようになります。
実験では、人間の培養細胞にウイルスと共に抗体が加えられ、感染が起きているかが確かめました。
人間の細胞はウイルスが感染すると、周囲の細胞と融合して巨大な多核細胞(シンシチウム)を形成することが知られています。
つまり抗体が感染を完全に防いでいれば、培養細胞は多核化が起こらないはずです。
実験を行った結果、培養細胞に多核化はみられず、抗体が完全に感染を防いでいたことがわかりました。
また、この抗体を、コロナ系のウイルスであるSARSと混ぜて培養細胞に加えても、多核化はみられませんでした。
この事実は、新しく作られた抗体にはコロナ系のウイルスに対して汎用的な効き目があることを意味します。