今、北極圏に生息する「コモリグモ(Wolf spider)」に異変が起きています。
コモリグモは、世界各地に分布しており、地上を歩き回ってエサを取る徘徊性のクモです。
母親が卵や子どもを献身的に守ることから、「コモリ」という名前がつけられました。
ところが、現在、コモリグモの中でカニバリズム(同種食い)が激化し始めているのです。
しかも、メス親が、子どもや若い世代をターゲットにしているのだとか。
子ども想いのメス親に何が起きているのでしょうか。
カニバル化は温暖化が原因?
コモリグモのカニバル化は、セントルイス・ワシントン大学による、アメリカ最北端のアラスカ調査で明らかになりました。
研究主任のアマンダ・コルツ氏は「この変化には、アラスカの温暖化が関係している」と指摘します。
近年、アラスカでは、急速な温暖化が進んでおり、野生生物の数や生態に多大な悪影響を与えています。コモリグモも例外ではありませんでした。
アラスカの2地域に生息するコモリグモを調べてみると、メスのサイズが通常より大きくなり始めていたのです。
クモのように体温を外部に合わせて調節する生き物は、温暖化による変化を被りやすい位置にいます。そして今、夏の期間が長くなりつつあるアラスカで、その影響がコモリグモの体に表れ始めたと言えるでしょう。
コルツ氏によると、メスのコモリグモは、体が大きくなるほど繁殖能力が高くなり、より多くの子孫を残します。
しかし、子孫繁栄がそのまま、種の繁栄に繋がるとは限りません。アラスカでは、コモリグモにとっての資源やスペースが限られています。
つまり、食料とスペースの確保として、同種間の争いが生じるのです。