腎臓は尿の生成や血圧を調整する臓器で、人間は通常、左右に1つずつ、計2つの腎臓を持っています。しかし、そうでないケースもあるようです。
ブラジルに住む38歳の男性はある日、腰に強い痛みを覚えてサンパウロのリム病院(Hospital do Rim)にかけつけました。
診察後、腰骨の状態を調べるためCTスキャンを実施。担当医師は、その写真を見て愕然としました。
なんと男性は3つの腎臓を持っていたのです。
「3つの腎臓」は腰痛の原因ではなかった
CTの結果、腰痛の原因は「椎間板ヘルニア」を患っていることでした。
椎間板ヘルニアは、椎骨同士の間でクッションの役割をする軟骨(椎間板)が変形し、一部がすべり出すことで生じます。
すべり出した部分が、周囲の神経を圧迫することで腰に痛みが起きるのです。
しかし医師の注意が向いたのは、ヘルニアよりも「腎臓」でした。
腎臓は、一般に、腰上の背中側に左右ひとつずつあります。握りこぶしほどの大きさで、主に、血中にたまった老廃物を体外に排出する役割を持ちます。
しかし、男性の場合、左側の腎臓は通常の位置であったものの、骨盤のすぐ上に2つの腎臓が合体するように存在したのです。
ふつう、左右の腎臓は尿管を通して膀胱に繋がります。
対して男性の腎臓は、骨盤上の右側は通常通りでしたが、左側の尿管は、膀胱に繋がる前にその上の腎臓から降りる尿管と合流していたのです。
下画像の向かって右半分を参照してください。
担当医師は「3つの腎臓を持つことは、きわめて珍しいことです。原因はおそらく、胚の発生段階で、1つの腎臓をつくるはずの部分が2つに分かれた結果でしょう」と説明します。
一方で、男性の腰痛は、あくまでもヘルニアが原因であり、3つの腎臓はまったく関係ないとのことです。機能面でも問題は見られませんでした。
このようなケースは具体的な症状がないため、男性のように腰痛がきっかけとなって偶然発見される以外には見つかりません。ですから、気づいていないだけで3つ目の腎臓を持っている人は意外に多いのかもしれません。
ちなみに、男性は腎臓への処置は一切必要なく、腰痛の鎮痛剤をもらって無事帰宅したとのことです。
症例の報告は、5月6日付けで「The New England Journal of Medicine」に掲載されています。