「スマホを充電すると重くなる」は本当だった! 同じ原子間の質量の違いを初測定

physics 2020/05/08

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point
  • 同じ原子でもエネルギーを吸収すると重くなることがわかった
  • 新しい質量検出技術を使えばダークマターの正体に迫れるかもしれない

以前より噂されていた「スマホは充電によって重くなるの?」という疑問に対する答えが、ついに得られました。

ドイツの研究によって、単一原子にエネルギーを与えると重くなることが初めて観測されたのです。

これまでにも理論的にはエネルギーと質量は互いに変換可能であることがわかっていましたが、実測による証明(原子レベル)は初めて。

この研究によって、スマホの充電だけでなく、バネの原子にエネルギーを与える機械式時計のネジ巻きですら、スマホや時計の質量を増加させる要因になることが分かりました。

それでは、原子はどうやって自分の重さを変化させたのでしょうか?

原子にエネルギーを与えて重さの変化を調べる

エネルギーと質量は互いに変換可能/Credit:depositphotos

原子の質量変化を測定するにあたって研究者が利用したのはアインシュタインが作った「E=mc 2」という式でした。

この式は、質量が膨大なエネルギー(1gの質量は90兆ジュール)に変換可能であることを示しています。

原子爆弾がその端的な例です。原子爆弾があれほど強力な破壊力を持っているのは、質量をエネルギーに変換する爆弾だからです。

ですが今回、研究者たちは原爆の逆を目指しました。

原子にエネルギーを与えることで、原子の重さの変化を測定しようと試みたのです。

アインシュタインの式が正しければ、エネルギーを与えられた原子は、そのぶんの質量を増すはずです。

原子の重さを測るには動きにくさを測ればいい

 

人間でも軽い人よりも重い人のほうが転がりにくい/Credit:depositphotos

研究者たちは単一の原子を特殊な磁場に閉じ込めて、一定の速度で回転するように調整しました。

もし原子が重くなれば、原子はそのぶん回転速度が遅くなります。なぜなら、質量は物体の動きにくさを定義の一つにしているからです。

宇宙空間で小さなボールを蹴ると、ボールは簡単に飛んでいきますが、重い人工衛星を蹴っても動きません。

これは人工衛星がボールよりも質量が多い分だけ、動きにくくなっているからです。

同じように原子がエネルギーを与えられ、重くなっていれば、同じ構造の原子でも回転速度も遅くなります。

この物理学の原理を元に、研究者たちはレーザーを使って原子にエネルギーを与え、原子の回転速度の変化を調べました。

その結果、エネルギーを与えた原子では、回転速度の低下が観測されたのです。これは原子がエネルギーを得ることで重くなることを意味します。

スマホも充電によってバッテリー内部の原子にエネルギーが蓄えられれば、そのぶん重くなると考えられます。

原子のサイクルを利用した究極の時計

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今回の実験結果を応用することで、完璧な精度をもった究極の時計を作ることが可能になりました。

エネルギーを与えられた原子(レニウム)の電子は、きっちり同じ時間(約130日)でエネルギーを放出して元の軌道に戻るからです。エネルギー放出によって、原子の質量もまた、元に戻ります。

このことを利用して「エネルギー照射」「原子の質量増加と電子の軌道変化」「原子のエネルギー放出」の3つを循環させることで、光学電子時計を含むあらゆる時計よりも正確な、究極の時計をつくることが可能になります。

また、回転を利用した質量検知技術は、非常に弱い重力でしか検知できない未知の粒子を探す手伝いになると考えられます。

最も期待されているのは、この超精度の質量検知技術を暗黒物質(ダークマター)の探索に用いることです。

人類の基礎科学は新しい測定方法をみつけることで進歩してきました。

新しい質量測定法は人類に、ダークマターの制御をも可能とするかもしれませんね。

 

研究内容はドイツ、ハイデルベルク大学のR. X. Schüssler氏らによってまとめられ、5月6日に世界で最も権威ある学術雑誌「nature」に掲載されました。

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reference: sciencedaily / written by katsu
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