マスクをしているときに、飛沫はどのように広がるのか
流体力学による考え方は、現在のマスクを更に改善させることができます。
新型コロナウイルスは潜伏期間が長く、無症状の人も多いため、フェイスマスクによる内部と外部の保護が必要です。
しかし、N95マスクなどを含む多くのマスクは、装着者本人を守る「内部保護」を目的として作られているため、「飛沫を排出させない」ための「外部保護機能」が弱いのです。
ミッタル氏の論文によると、マスクの効果性は、主にマスクの素材によるフィルター性能と鼻や顎の隙間によって大きく影響されるとのこと。
さらに、吸入のプロセスでは、フェイスマスクの内部の領域に低圧状態が生成され、隙間による漏れが無くなるか、低減します。
そのため、適切に装着されたフェイスマスクの内部保護は、主にマスク素材に依存することになるのです。
しかし、外部保護に関しては、効果性がいまいちです。
人がくしゃみや咳をすると、マスクと顔の間で圧力が増加します。その圧力増加はマスクを外側に押し出すので、隙間を大きくし、そこから飛沫が排出されてしまいます。
もちろん、外部保護に関しても効果が無いわけではありませんし、呼吸や会話などの日常活動においては外部保護の役割を果たしてくれるので、着用すべきであることには変わりはないでしょう。
これまで軽んじられていたマスク保護ですが、現代の流体力学によって、マスクの内部保護と外部保護の仕組みを知ることができるようになってきました。
科学者たちは今、隙間による漏れを減少させるマスク設計に励んでおり、内部保護と外部保護を備えたマスクが今後作られるかもしれませんね。
ミッタル氏の論文は5月1日、「Cambridge University Press」に掲載されました。