メタノール中毒にはエタノール投与が有効
通常、エタノールを含む飲料を摂取すると、アルコール脱水素酵素として知られる体内酵素がこの化合物を分解し、毒性物質とアセトアルデヒドと呼ばれる既知の発がん物質に分解します。
これらは、代謝されてアセテートと呼ばれる副産物になり、さらに身体から排出される前に水と二酸化炭素に分解されます。
ですから、適切なエタノール摂取は問題ありません。
しかし、メタノールは、エタノールよりもはるかに少ない量でも命を脅かします。
メタノールも同じ酵素によって代謝されるのですが、方法は異なります。
最初に、ホルムアルデヒドとして知られている非常に有毒な化合物に変換され、その後さらにギ酸へと分解されます。
これら2つの物質は、永久失明、神経衰弱、死亡を引き起こすものであり、メタノール中毒の症状として知られています。
ですから、体がメタノールをギ酸へと変換する過程を止めることが、症状の緩和と治療に役立つのです。
そのため、医療スタッフたちは、ニャット氏に大量のビールを投与することにしました。
ビールにはエタノールが含まれています。肝臓は常にメタノールよりもエタノールの分解を優先するため、体内にエタノールがあるうちは、ギ酸への変換を食い止めることができるのです。
病院に到着したニャット氏には、すぐに缶ビール3本(約1リットル)が投与されました。その後、1時間に1本のペースで合計15本を投与。
この処置により、血液透析でメタノールを除去する時間を確保し、命を救うことができたのです。
ビールの飲み過ぎには要注意ですが、状況によっては命を救うこともあるのですね。