生きた筋肉と脊髄を接続したバイオボットの作成に成功!

technology 2020/05/20
ラットの胎児から生きた脊髄を摘出して腰椎部分を培養する/Credit:aip
point
  • 摘出した脊髄の長期生存と人工培養にはじめて成功した
  • 脊髄とつながると培養筋肉は自然なリズムで動きはじめた
  • 生きた脊髄と生きた筋肉を使ったバイオロボットが完成した

近年の急速な生物工学の発展により、ロボットの部品に生体組織を組み込むことが可能になりました。

以前の研究でも、カエルの筋肉からなる生体ロボット(ゼノボット)に、前進移動する能力を与えることに成功しています。

しかし、機械が筋肉を自由に稼働させるために必要な制御技術は、まだ確立されていません。化学薬品や電気刺激によっても筋収縮の制御は可能ですが、自然とは言い難い方法です。

そんな中、アメリカの研究者が、新生児ラットから摘出した脊髄パーツ(腰椎)を筋肉と神経接続させた結果、自然な歩行リズムで筋肉を収縮させることに成功しました。

これは両者が接続を確立させることで、再び脊髄が筋肉の動きをコントロールし始めたことを意味します。

今回の技術を応用することで、生きている脊髄と生きている筋肉から構成された、より生物に近いバイオロボットの開発が可能となるでしょう。

またこの技術は、脳や脊髄を含む中枢神経を新しい肉体に移す移植技術にも必要なものです。

生きている部品を組み込んだバイオボットは、ロボットの概念をどのように書き換えるのでしょうか?

バイオボットの組み立て

骨格のまわりに筋肉を培養して、脊髄を張り付けて神経接続が行われるまで培養する/Credit:aip

バイオボットの組み立ては、上の図にように3段階に分かれて行われました。

ステップ1ではバイオボットの骨格となる枠組みを3D印刷技術をもって作ります。骨格の素材は柔らかなヒドロゲルでできており、筋肉の動きをトレースしやすくなっています。

ステップ2では筋肉細胞を培養して、骨格にある2本の柱の間に筋肉組織を張り巡らします。

ステップ3では、完成した筋肉の橋に脊髄の後ろ足の制御を行う個所(腰椎)を切り出して貼り付け、神経接続が確立するまで培養を続けます。

摘出した脊髄の長期生存と人工培養にはじめて成功した/Credit:aip

今回の研究の成果の一つに、無傷で摘出された脊髄の培養に初めて成功したという点があげられます。

その結果、上の図のように、生きた脊髄が培養によって新たな神経を伸ばす能力があることが分かったのです。

研究者はこの脊髄の生存能力を利用して、マウスの後ろ足の制御にかかわる部分(腰椎)と筋肉との神経接続を試みました。

木の幹のような太い繊維が筋肉。筋肉に比べるとニューロンは非常に細い/Credit:aip

脊髄と筋肉を共に培養して7日が経過すると、脊髄から運動ニューロンが伸びて筋肉の収縮を引き起こす電気活動を生成し始めました。

これは生きたまま摘出された脊髄が、筋肉との再結合をはじめたことを意味します。

筋肉が収縮すると骨格も変形し、2本の柱が近づきます。

なお、なぜ神経の再接続に要したのが7日なのかは不明とのことです。

脊髄を操作して筋肉を動かす

神経伝達物質を使って脊髄を制御することで、筋肉の制御も可能になった/Credit:aip

次に研究者は、貼り付けられた脊髄が、筋肉の行動を制御するにあたって実行可能なメカニズムが残っているかを調べました。

脊髄と筋肉は細胞レベルでは生きてはいますが、統一性のある「命」は失われており、神経による筋肉の制御機構が残っている保証はありません。

そこで研究者は脊髄パーツに対して、神経が筋肉の収縮を促す命令に使う神経伝達物質(グルタミン酸)を注ぎました。

するとバイオボットはランダムな収縮運動から規則正しい収縮運動に転換し、骨格筋を自然な歩行リズムで動かしはじめました

また逆に、神経伝達物質の伝達を阻害された場合、バイオボットは活動を停止しました。

このことから、摘出された脊椎(腰椎部分)にも、神経を介して筋肉を制御する自然な力が残っていたことが分かったのです。

研究者たちは続く実験で、バイオボットの動きをさらに洗練させ、完璧な歩行の再現を目指す予定です。

中枢神経移植技術が最初の関門を突破

Credit:depositphotos

今回の研究は、将来行われるだろう、脳を含む中枢神経の移植にとっても、重要な基礎データとなります。

皮膚や肺、心臓やすい臓など、複数の培養臓器(オルガノイド)を統合する疑似人体の作成は進んでいるものの、古い体から摘出された中枢神経との接続能力が失われていれば、新しい肉体への移植は絶対に成功しません。

しかし本実験により、無傷の脊椎を摘出して培養する方法が発見され、接続の再確立という基礎項目もクリアされました。

また移植手術以外にも、神経と筋肉を統合したバイオボットは、様々な医薬品に対する疑似的な人体実験や医療トレーニングの材料としても活躍すると考えられます。

実際、研究者たちはバイオボットを神経変性疾患をリアルタイムで研究する素材として使う計画も立てています。

 

研究内容はイリノイ大学のCDカウフマン氏らによってまとめられ、4月28日に学術雑誌「ALP Bioengineering」に掲載されました。

Emergence of functional neuromuscular junctions in an engineered, multicellular spinal cord-muscle bioactuator
https://aip.scitation.org/doi/10.1063/1.5121440

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reference: sciencedaily / written by katsu
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